その面影は
そして、ラーシャを見つめる視線がもう一つ。
イヴァンは相棒であるフロウに乗りながら、首を傾げる。
【どうした?イヴァン。人間に興味を示すなんて珍しい】
「いや…誰かに似てると思ってな…」
ラーシャが同郷の男と話しながら笑っているのを見てハッとした後、思わず笑みが溢れた。
「なるほど、ライゼの娘か」
【ライゼってあのアホなライゼか】
「そうだ、間違いない。ジルジ出身だと言っていたからな」
フロウはラーシャを見て納得したように頷いた。
【銀の髪…確かにライゼの髪と一緒だな。兄弟揃って騎士団希望か】
「そのようだな。…今日の見回りは楽しみだ」
イヴァンの上機嫌な声にフロウは内心驚きの声を上げる。
感情を一切出さないイヴァンが、今日は珍しく出している。…気心知れた人で無いと気づかない程度ではあるが。
まぁ、確かにあのライゼの娘は気になる。
「団長!準備できました!!」
その時、コルネに声をかけられイヴァンはすぐにいつもの無表情になると頷いた。
「すぐに出発する。俺は後ろから着いていく。コルネを先頭にして見回りを開始しろ」
「了解しました!」
コルネは元気よく返事をすると、踵を返して今すぐ出発する事を伝える。
【コルネも入団して三年。立派になったな】
フロウの言葉にイヴァンは頷く。
「ここで三年も続けば立派な騎士だ。…ノエル、あとは任せた」
「はい!団長!お気をつけて!!」
ノエルに見送られながら、イヴァンは先に飛んでいったコルネ達を追いかけるようにフロウに指示を出す。
フロウは一気に飛び上がると、最後尾に陣取り受験生達の様子を見守る。
自らの目で受験生達に騎士の素質があるか、見出すために。
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塀の外を出れば、そこはもう雪原だ。
月明かりに照らさた雪原はルーキスの鱗のようにキラキラと輝き美しい。
「夜の雪原ってすごく綺麗ね」
ルーキスにそう言えば、呆れたようなため息が返って来た。
【もう少し緊張感を持て。夜は危険なんだ】
「わかってるって。…でも本当に綺麗」
それからすぐに森が見えて、ラーシャは思わずクスリと笑う。
所々に散りばめられた小さな森の木々は粉砂糖を振るわれたかのように、薄く雪が積もっていて美味しそうに見える。
宿舎に戻ったら甘いお菓子食べたい。
呑気にラーシャはそんな事を考えながら、夜の見回りを続ける。




