夢への第一歩
朝食を終えて、荷物の最終確認も済ませたラーシャは外に出ると深呼吸をして胸を押さえた。
さぁ、いよいよだ…!
期待と不安でドキドキして口から心臓が出そうだ。
「さて、行くか。アイシャ、頼む」
【了解】
騎士団の制服に着替えたゼンが後から出てきてそう言うと、アイシャが身体を大きくするとその背中にゼンを乗せる。
手慣れた様子でゼンは腰から伸びる竜紐と呼ばれる命綱についている金具を竜帯の金具に引っ掛け、しっかり固定されたか引っ張って確認する。
「よし」
「ゼン兄!!」
「どうした?って、おい!」
驚くゼンを気にすることなく、ラーシャはアイシャによじ登ってゼンの前に座った。そして振り返ってニッと笑う。
「行く場所は同じなんだから一緒に乗っけて行って!」
「はぁ?妹乗せて行ったら恥ずかしいから嫌だ!自分で歩いて行けよ!」
「ケチ!」
【いいじゃない、減るもんじゃないし】
アイシャの言葉にゼンが嫌そうな顔をする。
「乗せてやりなさい。ゼン」
ハクレンと共に見送りのために出てきたシューリカにまだ言われて、ようやくゼンはため息をついて折れた。
「わかったよ…ほら、竜紐を固定しろ」
「はーい」
少し手こずりながらも、ラーシャは紐をしっかり固定する。それを確認してゼンは頷いた。
「…大丈夫だな。じゃあ、行ってくる」
「おばあちゃん!行ってきまーす!!」
「はいはい、いってらっしゃい。気をつけるのよ」
シューリカの言葉に頷きながら、アイシャ、とゼンが声をかけるとアイシャは大きな翼を羽ばたかせ、ゆっくりと宙に浮かび、その後一気に空へと舞い上がった。
小さくなったシューリカとハクレンに手を振った後、ラーシャは手をギュッと握りしめた。
「よし、頑張るぞ」
「ああ、頑張れよ。お前の夢の第一歩だからな」
ゼンに頭をワシャワシャと乱暴に撫でられ、キャーッ言いながら嬉しそうにラーシャは笑った。
この数時間後には自分の竜と共に家に帰るのだと思うと、嬉しさが止まらない。




