懸念
後半組が全員魔力切れを起こしたのを確認すると、コルネが前に出て来た。
「お疲れ様。みんな自分がどれだけ撃てるか把握できたかな?…明日もこの訓練をするから明日はどうしたら、今日よりも多く撃てるか考えて来てね。純粋に魔力量もあるし、身体の中の魔力をもっとうまく操れれば多く撃てるかもしれない」
コルネはそう言うとニッコリ笑った。
「さて、みんな魔力切れで身体が動かないだろうから今日の訓練はここまで。じゃあ、竜の諸君!自分の相棒を頼むよ」
その一言で一気に緊張感が抜けて、受験生達が話し出すと慌ててコルネが手をパンパンと打ち鳴らして、注意を再び自分に向けた。
「ここは街の外で危険だから、雑談は街に戻ってから!!これを守らない人は失格にするよ!」
その言葉を聞いて、受験生は慌てて黙り込むと竜に抱き抱えられる形で塀の中へと戻って行く。
「まったく…」
【お疲れ、指導役も大変だ】
「大変ってもんじゃないよ。早く試験終わって欲しい…」
コルネはそう言ってため息をつくと、名簿に視線を落として唸る。
【どうかしたか?】
「いや…別に…」
【別にって顔でもないけどな。何かあったんだろ?】
「いやー…」
その時、他の騎士から呼びかけられてコルネは話を打ち切った。
「さ、受験生の指導が終わったから夜の見回りに行くよ」
【はいはい】
コルネは抱いた疑惑を後でイヴァンに相談しようと重いそっと胸にしまい込んで、夜の雪原の見回りを仲間の騎士達と共に行う為に、ファムの背に乗り込んだ。
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宿舎に帰ってくると、もっと今日の訓練について話し合いたかったのだが魔力切れのせいで、身体がだるくて話していられるような元気が無い。
ラーシャはベッドに傾れ込むと、そのまま瞼を閉じる。
【ラーシャ、寝るなら着替えを…せめて布団の中で寝ろ】
「ふぁ…い」
宿舎の中でルーキス達が元の姿の大きさに戻る事は流石に出来ないので、だるい身体を無理やり動かしてやっとの思いで念願のベッドに辿り着けなのだ。
もう指一本も動かす事は出来ない。
「あと…あと、五分…五分だけ…」
【どうせ五分じゃ起きないだろ?…ラーシャ?】
ラーシャの身体を一生懸命揺らしているにも関わらず、規則正しい寝息が聞こえて来た。
【ダメだ…起きない】
ルーキスはため息をついて、ダブルベッドの方に視線を向けると、シンシアとオルフェが顔を覗かせていて首を横に振っていた。
どうやら状況はみんな一緒らしい。
三匹は共闘して、相棒の下から布団を引きずり出して風邪をひかないよう布団を掛けてやるのだった。




