初仕事
次の日の早朝、ブドウチームと入れ替わりにラーシャ達、バナナチームの騎士としての仕事がついに始まる。
準備体操を終えて、最初の任務はなんだろうとワクワクしているとバナナチームを担当するコルネの指示で演習場を竜を肩に乗せたままで五十周走り込みから始まった。
昨日の夜から降っていた雪のせいで足場はかなり悪い。
それでも、ラーシャとベインはこの一ヶ月砂浜の上で訓練していたお陰で特に苦になること無く走れた。
「ゼン先輩に感謝だな」
隣で走るベインに言われてラーシャは頷いた。
「本当にね!帰ったらお礼言わなきゃ」
息を弾ませながら、ラーシャはそう言って自分達の居る集団から少し離れたところで顔を真っ赤にさせて一生懸命走るアルスを見て心配そうな顔をする。
「アルス、あの調子であと四十周できるかな?」
【キツそうだな】
「よしっ!一緒に走ってくるか」
ラーシャはスピードを落としてアルスの隣に並ぶ。
「ら、ラーシャ…」
「大丈夫?無理して速く走らなくていいから、落ち着いて。一定のペースで一緒に走ろう?深呼吸をして…そうそう、力んでるから少しリラックスして」
ラーシャにアドバイスを貰いながら、必死にアルスは喰らいつく。
この調子なら何とか走り切れるだろう。
二十週走ったところで、体力の無い者はラーシャ達の方への下がってきた。
その中にはキルディの姿もあった。
受験者の中で一位の座に着いているのに、体力が無さすぎる。
何位だがわからないが、それでもキルディよりも順位が低いラーシャでもまだまだ余裕なのに。
ミラとベインは先頭を余裕そうに走っていた。
「やっぱり、キルディは成績偽ってるんじゃない?八位のミラだって余裕そうだよ?」
「わ、私にはよ、よくわかりません…」
顔を真っ赤にしさせたまま困った表情をするアルスにラーシャは苦笑した。
「まぁ、そうだよね。…フォローするなら雪に慣れてないのもあるのかもしれないけど」
【それは一理あるな。これから一緒に試験を受けていく中でわかっていくだろ】
ルーキスの言葉にラーシャは頷くと、余計な事を考えるのはやめて走ることに集中する。
それから、バナナチームは誰一人かけることなく何とか五十週を走り切った。




