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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
再会と覚悟とスノウコルド
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何様

 そして、みんなの視線はアルスへと向けられた。


「ひっ…」


 普段、注目されることに慣れていないアルスは震え上がりオルフェをさらにギュッと抱きしめ、チラッとロベリエを見る。

 ロベリエの視線が一番怖い。早く話せと言う圧を感じる。

 アルスは何度か深呼吸を繰り返し、俯くの口を大きく開ける練習をしてからもう一度深呼吸をした。


「えっ、えっと…キルディ、様は…」

「「「キルディ“様”!?」」」


 三人が大声を上げ、アルスはさらに縮こまるがオルフェに手を甘噛みされて、続きを促される。


「き、キルディ…様からは、そ、そそその“様”をつつ付けるようにと」

「はぁ?何様なわけなの?」


 ミラが呆れたように言うとシンシアも頷いた。


【本当に。貴族様か何かと思ってんのかね?】

「あ、い、いえ…えっと騎士団長の、ごごご、ご子息で、す…」


 ラーシャとロベリエは知っていたので特に驚きはしなかったが、ミラは目を見開く。


「騎士団長ならわかるけど息子でしょ?そんなに偉いの!?」

「あ、いえ、あの…わ、わわ、私の住むギルバルザでは騎士団長はキルディ様の一族が、だだだ代々受け継いでい、いて、ま、街で一番、け、権力を持っているので、す」

「つまり“様”をつけてもらって当然だと?」


 そう言ってミラは微笑むがその笑みは物凄く怖い。

 アルスにその笑みが見えなかっただけ、不幸中の幸いだろう。


「あー、確か、おじいちゃんがギルバルドはある一族の中から騎士団長を決めるからすごく問題だって言ってたなぁ…」


 ロベリエがそう言って懐かしそうな顔をした。

 そんなロベリエの隣でラーシャがニコニコ笑いながら、口を開いた。


「で?そのクソ野郎様は何であの場にいなかったの?」

「ラーシャ。言葉がすごく悪くなってるじゃん」

「あ、つい」


 ロベリエに指摘されてラーシャは肩を竦めた。


「それで?どうしていなかったの?」

「あの時、ブレ、ブレイズルチャにお、襲われた時、キルディ様が勝ち目は無いと、にげ、逃げる判断をしたのです。でで、でもキルディ様とご友人の、リヒター様が…」


 どうやら、キルディのご機嫌取りの名前はリヒターというらしい。アルスがキルディの友人でさえ“様”をつけているが、もう誰も指摘しようとはしなかった。


「私から、離れたしゅ、瞬間…わ、私とオルフェの前にみえ、見えない壁が、現れて…にげ、逃げれなくなってしまって…私、どう、すればいいかわから、ななくなってしまったのです…」

「それって…キルディ達がアルスとオルフェを囮にして逃げたって事…だよね?」


 ラーシャの言葉にアルスは身体を震わせて頷いた。


「ふ、普段から役に、立たないからと…。で、でもあんなとこ、ところで死ぬのは嫌です。…ほ、本当にたす、助けていただきありがとうございました」


 再び頭を下げるアルスにラーシャとロベリエは顔を見合わせた。


「私達は構わないけど、これって私たちがたまたま通り掛からなかったらあなた死んでたのよ?イヴァン騎士団長に言って厳罰してもらった方がいいと思うわ」

「ダメです!!」


 ロベリエの言葉を今までで一番大きな声を出してアルスが否定した。


「それ、それだけは、ダメです…。も、もし、これで、試験からおちおちおち、落ちるような事があれば、ま、間違えなくほう、報復され、されます…!」

「そう?…でもそうねぇ。街の一番の権力者じゃこの後が怖いか…」


 ロベリエは頷いて再び考え込む。


「ところでキルディって本当に騎士団のテスト受かったの?」


 ラーシャの質問に全員が驚いて視線を向けた。


「だってそうでしょ?筆記に騎士団の心得とか、いろいろ書いてあったけどさ、キルディの中身って全然騎士団の理念からはかけ離れてるよね?技術はあっても、簡単に弱者を見捨てるのは仮にも騎士団の一員としてどうなの?」


 ラーシャはムスッとして言った。

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