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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
再会と覚悟とスノウコルド
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石碑

 道具置き場の説明を受け、次の場所へ向かう途中、ラーシャはふと足元を見た。

 スノウコルドは雪と氷に覆われた地だと聞いていたからてっきり、街の中でも地面は雪に覆われていると思っていたが、綺麗に石畳が敷き詰められ滑る所もあるが、それでもかなり歩きやすい。


「スノウコルドの街はもっと雪に埋もれて歩きにくいと思ってました」


 ラーシャが近くにいるバナナの絵を持っていた男の騎士に声をかけると、騎士は笑って頷いた。


「そりゃあ、そうだよ。街の中まで雪まみれだったら生活し辛いだろ?だから、雪がたくさん降った次の日は雪掻きをしたり、赤竜や緑竜に手伝ってもらって歩道を整備するんだよ。…あ、僕はコルネ。君たちのチームを担当するんだ。よろしく。この子は相棒のファム」


 紹介されると緑竜のファムはコルネの肩の上でペコっと頭を下げた。


「ちなみにスノウコルドの街の地面は全て石畳で覆われているんだよ」

「全部ですか?歩道じゃ無いところも?」

「そう。庭も全てね」


 首を傾げるラーシャにコルネは得意げに笑った。


「きっとそのうち遭遇するだろうけど、雪の中を移動する魔物がいてね。昔は雪の中に潜って街を下から襲ってきていたんだ。だから、その魔物対策で敷地全て石畳ってわけ」


 どんな姿をしているのか全くわからないが、何も無い雪の下から突然魔物が飛び出してくる事を想像すると、ラーシャは身体をブルリと震わせた。


「その魔物凄い怖いですね」


 コルネは真剣な顔で頷いた。


「怖いよ。その魔物に何人もの仲間が殺されてるからね。…ほら、着いたよ」


 コルネに促されて、視線の先を見ると大きな石碑が見えてきた。

 そこは駐屯所の敷地の外れで陽の光がよく当たる場所だった。

 ノエルは石碑の前に立ち止まると深く一礼をする。

 それに倣って、コルネ達騎士も石碑に一礼をした。

 どうすればいいのかわからず、戸惑う受験生達の方にノエルは振り向くと柔らかく微笑んだ。


「みなさん、ここはスノウコルドを守る為に殉職された騎士達と竜の名を刻んだ石碑です」


 その言葉に、受験生達は黙り込むとその石碑に目を移す。

 刻まれた名前は古くなって薄くなっているものから最近刻まれたばかりのものもあった。


「スノウコルドは騎士達の死亡率が国の中で最も高い場所です。これから、あなた達は一ヶ月間試験としてこの場所で働いてもらう事になります。生半可な覚悟で挑めば必ず死が待っているという事を、どうか肝に銘じて試験にあたって下さい。…ここに眠る方々はいつも真剣に任務に取り組み、死を覚悟して大切な人たちを守る為に任務にあたっていた方々です。そんな方々でも命を落としてしまうのです。どうか彼等のために冥福を祈ってください」


 そう言って目を閉じるノエルに従って、受験生と騎士達は目を閉じて冥福を祈る。…キルディを除いて。

 キルディはつまらなそうに石碑を見つめた。

 試験中じゃなければ、石碑に唾でも吐き掛けてやるものを。

 綺麗事を並べたって結局、そこに名前を刻まれているのは魔物に負けた弱者だ。自分は絶対にそうはならない。

 早くこんなクソみたいな時間が終わらないかと、あくびを噛み殺しながら思った。

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