味方
「ジルジ管轄地区出身ラーシャ」
「はい!!」
やっと呼ばれた事に安堵のため息を吐くラーシャ。
「バナナさんチームです」
バナナさんチーム…!
一瞬、聞き間違えかと思ったが、ミラが満面な笑みでこっちに手を振っているのを見て聞き間違えでは無いと確信する。
ミラと同じチームになれて嬉しい。嬉しいのだが、ミラの後ろで物凄く嫌そうな顔をしているキルディがさっきからうっとうしいくらいに視界に入ってくる。
ラーシャは必死に強張る顔で笑みを作ると、バナナチームへと歩き出す。
【ラーシャ】
ノエルに怒られるので声を小さくしてルーキスが囁いた。
「何?」
そう言ってラーシャが聞き返せば、ルーキスは嬉しそうな顔をした。
【やっぱり、引き寄せたな。さすがラーシャ】
「…」
ラーシャは微笑むと、ルーキスを抱えている腕の力をグッと力をこめた。
ルーキスから“グェッ”という声が聞こえるが、知らない聞こえない。
そもそも引き寄せたわけじゃないし。
ラーシャは歩きながらギュウギュウにルーキスを力一杯抱きしめた。
一番最後に呼ばれたのは、あのオドオドした子で名前はアルスと言うらしい。
ノエルにバナナさんチームを言い渡され、涙目になり消え入りそうな声で返事をしてこちらへ合流すると、キルディが聞こえるような声で舌打ちをした。
「ひっ…」
それが聞こえたのか、アルスは小さく震えると目の前のラーシャの影に隠れる。
ある程度予想はしていたが、アルスにとってキルディは恐怖の対象らしい。
せっかくのキルディと離れられるチャンスを失ってしまったアルスに、同情するとラーシャはアルスの方を振り返り微笑んだ。
その事にアルスは驚いて震え上がる。
「私は、ラーシャ。あなたはアルスでしょ?これから一ヶ月よろしくね。試験、一緒に頑張ろうね!」
“私はあなたの味方だよ”そう伝えたかったのだが、うまく伝わったかはわからない。
だが、アルスがコクコク頷いてくれたので伝わったと信じたい。
受験生三十二人を各チーム八人に振り分けると、ノエルは満足そうに頷いた。
「チーム分けは以上です。では、各チームの隊長は前に出てきて下さーい。今からシフト決めします!!騎士団は三交代制となっており、シフト関係上、ジャンケンで勝ったチームは今日の夜勤から任務に当たってもらいます!」
ノエルはそう言って、隊長を呼び出してジャンケンをさせた。




