その苦労の原因は
「誰が発言しろと言った。俺が話をしている。その口をさっさと閉じろ」
イヴァンの言葉でその場が一気に凍りつき、しんっと静まり返る。
「団長!!だからもっと他に言い方が…」
「無い」
「そんなぁ…!!」
ノエルはそう言って頭を抱えて深く俯く。
あんなに演説する時は優しく言うようにと進言したのに!!
ただでさえ、不安な受験生にさらなる追い討ちを掛けるだなんて…。受験生が不憫すぎる。
スノウコルドは寒さと魔物のが強い上に、騎士団長も血も涙もない人で精神的に受験生を追い込んでしまうので、二次試験に向いていない旨を、来年はちゃんと女王陛下にお伝えしようと心に誓う。
イヴァンはそんな事を考えているノエルを無視して話を続ける。
「二次試験会場がスノウコルドと聞いた時点で試験は始まった。会場を聞いて辞退するような奴はそもそも騎士団になど向いていない」
イヴァンの言葉を聞いて、ラーシャは合格発表の時のことを思い出す。
デイルが辞退を許可したのはそう言うことだったのか、と納得するのと同時に、あの時ロベリエが言っていた事は間違っていなかったのだと痛感した。
「さらに各騎士団で先に一ヶ月訓練したと思うが、そこで実力が無い者はスノウコルドでの試験に参加する事は許されなかったはずだ」
ラーシャ達は全員無事に参加できたが、他のところでは思い当たる所があるらしく、息を呑む音が聞こえてきた。
「つまりここにいる者達は、各騎士団が入団しても問題ないと太鼓判を押してスノウコルドへ送り出したのだと俺は理解している。よってここでの試験は、第十騎士団として一ヶ月働いてもらう。その働きぶりを見て、俺がお前達の合否を決定をする。異論は一切認めない」
イヴァンの発言に全員が再び、ざわつく。
つまり明確な判断基準などは無く、イヴァンの独断で合否が決まるのだ。
「聞いてなかったのか?俺が判断すると言った。ここでベラベラと喋ってる奴は一人残さず全員落とすぞ?」
再び水を打ったように静まり返り、ノエルの弱々しい“団長…”っと呼ぶ声が響く。
「他に…他に、もっと言い方が…」
「無い」
「そ、そんな…。い、胃が痛い…」
「医務室で胃薬をもらってこい」
「誰のせいだと思ってるんですか…」
がっくり肩を落とすノエルを見て、あの人すごい苦労してるんだろうなぁ。とその場にいる全員が思った。
「俺からは以上だ。今から一次試験の結果を元に平等に三チームに分ける。…ノエル、あとは任せたぞ」
「は、はい!…え?団長?最後までいないんですか?」
さっさと自分の相棒である白緑竜のフロウの背中に乗り込む、イヴァンを見て咎めるようにノエルが尋ねる。
「時間の無駄だ。俺は駐屯所に残っているものを数人引き連れて巡回をしてくる」
「えー…。これも結構重要な任務だと思うんですけど…」
ノエルの言葉を最後まで聞く事なく、イヴァンはフロウに乗って飛んで行ってしまった。




