頼む相手
「え?どういうこと?」
「まぁ、まだラーシャには難しいかもね」
困惑するラーシャとムッとしているセルジュを見比べてにまにま笑っていると、通信が入ってミラは耳飾りに触れた。
「え?あっ!ごめん!…うぅ…はい、すみません。わかったって!ごめん、今すぐ戻るよ!はーい」
ミラは通信を終えると、ラーシャ達に手を合わせた。
「ごめん!仲間がもう時間だから戻って来いって!珍しい銀髪を見て絶対ラーシャだ!って思って仲間にも何も言わないで走ってきちゃったから怒ってててさ…。もうちょっと話したかったんだけど、また今度ね!!ごめん!」
ミラはそう言い残して慌てて仲間の元へと戻って行った。
【嵐のような奴だったな。あの子が前に言ってた子か?】
「そう!よく覚えてたね!…私なんて、色々ありすぎて忘れてたのに…。本当に申し訳ない…」
「まあ、確かに契約してから色々あったからな。しょうがないと思う」
怒っててもフォローを入れてくれるセルジュにラーシャは感謝しながら、試験が終わったら絶対にミラの住むテヘラに行こうと心に決める。
「あ、でも文通したいからその前に住所聞くのが先かな」
「おい、ラーシャ」
後ろからいつに無く、ベインに真剣な声で呼びかけられラーシャは驚いて振り返る。
「何、ベイン?」
「彼女誰なんだ?お前、何で第二騎士団の子と仲がいいんだ?」
「え?あぁ…ミラは、契約試験の時に会った子でまだ私がルーキスと契約できてない時に応援してもらって…」
ラーシャがそう言うと手をガシッとベインに掴まれ思わず、ヒッ、と悲鳴が漏れ出る。
「…して…くれ…」
「え?なんて?」
声がカッスカスでなんて言ってるのかまったくわからない。
「だから…!…かい…してくれ…」
「重要なところが声が小さすぎて全然聞こえないんだって」
ラーシャに伝わらなすぎて、ベインは顔を真っ赤にさせると身体を震わせた。
「だから!彼女を俺に紹介してくれ!!」
ベインの頼みにラーシャが驚きすぎて言葉を失う。
【それ、絶対頼む相手間違ってると思うぞ】
ルーキスの言葉にニクスとセルジュも頷いたが、ベインも背に腹はかえられない。
「頼む!一生のお願いだ!」
「べ、別にいいけど…」
わけがわからないままラーシャはとりあえず快諾した。
「ラーシャはちゃんとミラちゃんに紹介できるかしら?」
面白そうに笑うロベリエにセルジュは首を横に振った。
「絶対無理だと思うけどな」
「だよねー」
その時、受験生の前に十ニ匹の竜が降り立った。
「はーい!受験生の皆さーん!!ちゃんと来てますかー?」
赤竜から飛び降りた華奢な女が明るい声でそう言う。
「遠路はるばるお疲れ様です!第十騎士団、副団長のノエルです!では、皆さん!今から番号が書かれた看板を持った騎士が並ぶのでそこに各騎士団の番号通り並んでくださーい」
ノエルがそう言うと、十人の騎士たちが一番から十番までの看板を持った者が横一列に並んだ。




