使命感
とりあえず、気分を変えるためにもメニューをサッと見て料理を注文した。
しばらくすると店員が料理を運んできて、テーブルの上に手際よく並べていく。
ラーシャ達は目の前に並べられた料理を見て目を輝かせる。
野菜と肉がゴロゴロ入った熱々のブラウンシチューに湯気がまだ昇る、ほかほかの柔らかそうなパン。
見ているだけで涎が出そうだ。
竜達の前にはそれぞれ巨大な肉の塊のステーキが置かれた。
長旅のお礼に奮発して、ファイボアの肉にしたのだがルーキスが尻尾をブンブンして喜んでいるのを見て奮発してよかったと思う。
ソルの家に居候を始めてからすっかり食事前に竜神様に祈るのが習慣になったセルジュを待ってから四人揃って食事を始める。
早速ラーシャはブラウンシチューを食べて目を見開く。
野菜や肉の旨みが溶け出していて、物凄く濃厚で美味しい。
「肉がすげー柔らかい!おい、食ってみろよ!」
ベインに促され、ロベリエも肉を頬張り幸せそうな笑みをこぼす。
「美味しい…。今まで食べたお肉で一番柔らかいわ…」
「だろ?」
上機嫌でベインは頷くとセルジュがパンにシチューをつけているのを見て真似をする。
「この食い方もうまい…」
「そうだろ?」
セルジュは得意げに笑う。
「じゃあ私もやろうっと」
ラーシャはパンを手に取ると、半分に引きちぎった。
割った瞬間、ふわんっと湯気と共に焼きたてのパンのいい顔が包み込む。
「うわぁ…。めっちゃいい香り…」
ラーシャがうっとりしていると、視界の隅にさっきの第五騎士団の受験生達が入った。
さっき来たばかりなのにもう食事を終えて出て行くところのようだ。
ラーシャに気づいて、キルディともう一人の男がこっちを見てニヤニヤしながら何か話している。
「何を話してるかわからないけど、いい気分はしないわね」
ロベリエも気づいて呆れたように言う。
「もし、あれが受かって同期になるとか凄い嫌なんだけど」
「同感だな」
セルジュも表情を変えずに同意した。
その時、二人からだいぶ遅れてさっきの女が慌てて後を追って来た。
キルディは女を嫌そうに見て何かを言うと、男と共に先に出て行く。
女はその後、会計を済ませ出て行こうとしたところでラーシャ達の方を見て頭を下げてから出て行った。
「まさかあの子に全額支払わせてねぇよな?」
「いやー、あの感じなら無いこともないんじゃない?」
ベインの言葉にラーシャはそう言うとため息をついた。
「騎士団を受ける人ってもっと使命感に燃えてる人とかと思ったけど違うんだね」
「みんながみんなってわけじゃないでしょう。…ほら、私たちも早く食べて行きましょ。スノウコルドまで後半分あるんだからね」
ロベリエに促されて三人は慌ててシチューをかきこんで食べる。
ちなみに竜達はすでに食べ終わって、ウトウトしながら人間が食べ終わるのを待っていた。




