聖光
『ゼン先輩って本当に心配性ね』
通信石から聞こえて来る、呆れたようなロベリエの声にラーシャは苦笑した。
スノウコルドに向かう道中、ラーシャはゼンの言いつけを守って死竜の話をしたのがロベリエに呆れられてしまった。
『今は死竜なんてほとんどいないのよ?』
「え?そうなの?」
そんなこと、ゼンは一言も言っていなかったのでラーシャが驚いて聞き返す。
『ええ。まぁ、それでも遭遇する可能性はゼロでは無いけど本当に限りなく低いと思うわよ』
『それを引き当てるのがラーシャなんだけどな』
『セルジュ、うるさいよ』
ラーシャはセルジュを黙らせる。昨日からみんな人を何だと思ってるんだ。
『ところで何でその死竜…?っていうのは数が減ったんだ?スノウコルドは竜の死場所だって言うなら、竜玉だってたくさんあるだろ?』
ベインが質問してくれたことによって話が逸れてラーシャは内心ホッとため息をつく。
『スノウコルドを守護する第十騎士団のイヴァン騎士団長の能力のお陰ね』
「第十騎士団長は能力持ちなの?」
『ええ、確か“聖光”と言う能力だったかな?』
「聖光?」
名前を聞いただけでは、想像のつかないスキルにラーシャは首を傾げた。
『聖光の能力はね、竜の死体を怨霊から守るためだけの能力なのよ。聖光の能力で守られた竜の死体は死竜になることは無く安らかに眠れるわ』
『つまり、イヴァン騎士団長は竜の死体を守るために世界樹の試練を受けたってことか』
セルジュは感心したように言う。
世界樹の試験は難しいと聞く。それなのに死んだ竜の為だけに能力を賜りに行くなんてそう簡単なことではない。
それが例え、竜を大事にする竜の国の民であっても。
「立派な人ね」
『そうね。確か実力も騎士団の中では第零騎士団のベル騎士団長の次に強いって聞いたけど…。もしかしたら、竜使いの称号も女王陛下から賜っているかもしれないわね。機会があれば話を聞いて見てもいいんじゃない?』
ラーシャは目を輝かせて頷いた。
身内以外の竜使いの話を聞ける機会なんて滅多にない。時間を見て話を聞きに行こうとラーシャはワクワクしながら決める。
『でもイヴァンって騎士団長、先輩達に聞いたらちょっと怖いって言ってたぜ?』
ベインの言葉に、あんまり怖くなさそうだったら聞きに行こうと心に決め直す。
その時、ラーシャは寒さに身体をブルリと震わせた。
だんだん冷えて来たのでさっき魔石を起動させたのだが、服の上から魔石を握りめもう一段階暖かさを上げる。
「冷えて来たね」
【ジルジを出て二時間半だからな。スノウコルドに近づく程、寒さは厳しくなる。人間の身体はひ弱だからな。そろそろ防寒着を着た方がいいだろう】
「そ、そだね…」
ラーシャがその事をみんなに伝えると、もうすぐ第三騎士団の管轄地、ヴェスパルの街に着くので着替えるついでに昼食も取ることになった。




