剣の師匠
夜になると、星見の砂浜にいつものように集まったラーシャ達は準備体操をしながらゼンが来るのを待つ。
しばらくして、ちょうど準備体操が終わる頃にアイシャが砂浜にやってきた。
【ごめんなさいね、お待たせ】
謝るアイシャの背中からゼンが飛び降りると、ラーシャ達に手を振る。
「遅くなって悪いな!今ちょっと迎えに行ってて…って、まだアイシャから降りてないんですか!?」
ゼンはアイシャの背中から何かに掴み掛かると、無理やり引き剥がす。
「往生際が…っ!悪いですよっ!!師匠!!!」
思いっきり引っ張ってようやくアイシャの背中きら引き摺り下ろすことに成功した。
「師匠…?」
ことの成り行きを見ていたラーシャが不思議そうに呟くと、ゼンがパァァァっと表情を明るくして頷いた。
「ああ!今日は最終日だから、スペシャルゲストを呼んだんだ!!…ほら、師匠!しっかりして下さいっ!」
ゼンはその人物を無理やり引っ張ってみんなの前に連れてくると、ドヤ顔で紹介し出した。
「こちらは俺の剣の師匠だ」
そう言って紹介されたのは、全身マントで覆われ顔もフードで隠された人物。
性別も全くわからない謎の人物をラーシャは訝しげに見る。
「剣の師匠…?ゼン兄にそんな人いた?」
「お前が小さい頃に剣を教えて貰ってたから、多分覚えてないと思うぜ?」
「なんでこの人顔隠してるんだ…?」
少し警戒気味に言うセルジュにビクッとマントの人物が肩を震わせた。
「それに一言も喋らないしな。すっごい怪しい」
「何が怪しいんだよ?ベイン。俺の師匠なんだから怪しいわけないだろ?師匠はな、すっごい恥ずかしがり屋さんなんだ!!…いって」
ゼンの頭を師匠がものすごい勢いで引っ叩く。
「…せっかく、庇ってやったのに…」
目に涙を溜めながら、ゼンは耳飾りに手を触れるとさらに眉間に皺を寄せた。
「え?師匠さん、もしかしてゼン兄が隣にいるのに通信石で通信してる?」
「さらに怪しいな」
不審者を見るような目で師匠を見つめるラーシャとベイン。
「大丈夫だって。マジで!声を出すのも恥ずかしいんだって!!…いって!!」
再び師匠に引っ叩かれるゼン。
それを見てアイシャは呆れたようにため息をつく。
【もう見てられないわ、行きましょう。今日は目森に行って大きな獲物狙うわよっ!】
アイシャはそう言い残して、ルーキス達を引き連れて森の方へと消えていった。
ゼンはゴホンっと咳払いをする。
「今日は最終日だからな。師匠にたっぷり剣技を教えてもらうといい!!」
ゼンがそう言うと、師匠がベインを指差す。
「じゃあ、まずはベインからだ!ほら、棒を構えろ」
「俺からかよ…!しゃあねぇな」
ベインはそう言って持って来ていた棒を拾うと、構えた。
それを見て師匠も構える。
「…あ、俺が通訳?…はい」
通信石からの師匠の指示にゼンはため息をついた。
「ベイン、準備は?」
「いつでも大丈夫だ!」
ゼンは頷いた。
「“では、俺から行かせてもらう!!”」
ゼンの言葉と同時に師匠が砂地を蹴り上げた。




