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竜使いのラーシャ  作者: 紅月
卒業と試練と騎士団
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その価値は

 ニアはソルの脇を小突いて、早くするように促す。

 ソルはゴホンっと、照れくさそうに咳払いをするとポケットから太陽と月が一つになったチャームを四つ取り出して、三人に渡す。


「これって…」


 ラーシャは渡されたチャームをよく見て小さな驚きの声を上げる。

 キラキラとまるで真珠と黒真珠のように輝く白と黒、鮮烈な赤、薄いがそれでいて品のある黄色の鱗を継ぎ合わせて作られていた。


【ソルの手作りか。…見事な出来だな】


 ルーキスの言葉に、ソルはヘヘッと鼻を擦る。


「デザインとかすげー悩んだんだぜ?ニアにデザイン確認して貰って何度、ダメ出しをもらったことが…」


 最後の方は悲しそうに言うソルにニアはにっこり笑う。


「そこは、こだわらせていただきました」

「まぁ、こだわったからすごいいいデザインになったと俺も思うぜ」

「あぁ、いいデザインだな。ソルがずっと夜遅くまで頑張ってたのはこれだったんだな」

「え!?知ってたのか!?」

「夜中目を覚ました時に“色の配色がぁぁ”って呻きながら机に向かってたのを見た」

「油断したぜ…死んだように寝てるからバレないと思ってたのに…」


 肩を落とすソルにセルジュがポンポンと肩を慰めるように叩く。

 ラーシャはそれを見てクスクス笑うと、チャームのフックをペンダントの鎖部分に引っ掛けた。


「こういう感じで使うんでしょ?どうどう?似合う?すごいいい感じ!」

「ええ!とても似合いますわ!!実は私達も魔石のペンダント作ったので、チャームをつければ四人お揃いです!!…ふふ、これで離れていても寂しくありませんわ」


 ニアがそう言って嬉しそうに笑うのを見てラーシャもあったかい気持ちになりギュッとペンダントを握る。


「すごく嬉しい。ありがとう、二人とも。これでスノウコルドに行っても頑張れそう」

「そうだな。これだけして貰ったんだ。絶対合格しないとだな」

「おう、頑張れよ!太陽と月はそれぞれ“成長”の象徴なんだぜ?これで、急成長して一気に偉くなって帰ってこい」

「「それは無理」」


 ラーシャとセルジュに声を揃えて否定すると、四人は声を出して笑い出す。


「後は夜の訓練を残すだけですわ。頑張ってくださいね」

「うん!これが終わったら明日は一日寝てるんだー!」

【荷造り終わらせてからな】

「ぐっ…」

【なんだか、ルーキスがラーシャの親みたいな感じになってるね】


 ニクスに言われてルーキスは鼻をふんっと鳴らす。


【どちらかと言えば兄だろう】

【年齢的にはおじいちゃんですねぇ】

【おじいちゃんじゃない!!】


 エルに噛みついて怒るルーキスを慌ててラーシャが止めに入る。


「ちょっ、ルーキス!!」

【放せ!!こいつは鱗を引き剥がさないと反省しない!】

【いたたたっ!してますよぉ!!】

「鱗剥がしたら俺にくれ!!」


 すかさずソルがご相伴に預かろうと走り出すのをセルジュが羽交締めにして止め、その様子を離れたところでニアとベルナデッタとニクスが呆れたように見ている。

 ラーシャはその光景を見て、しばらくみんなとこんな風に一緒に居られないんだと実感すると少し寂しい気持ちになるのだった。





++++++++++++++




 ベインがいつもの待ち合わせ場所に着くと、もうすでにフォルテ達が待っていた。


「悪い!遅れた!!」

「構わない。それよりお疲れ、前より痩せたんじゃないか?」


 フォルテの言葉にベイン肩を竦めた。


「毎日、訓練がやばくて…正直余裕がないぜ。まぁ、一ヶ月間頑張ったから体力は着いたけどな」

「確かに前より筋肉付いてる気がするな!…おお!腹も硬いじゃん!」

「だろ!!ついに六つに腹筋が割れたんだよ!!やばくね!?」

「おー!すげぇ!!フォルテ!触ってみろよ!!」


 ダルテに言われてフォルテも腹筋を押してみると、本当に硬いし服越しでもゴツゴツしてるのがわかる。

 一ヶ月間のベインの努力の賜物だろう。


「マジで、すごいな」


 褒められ、ふふんと得意げにベインが笑うと、ナイラも自慢げに頷いた。


【ベイン、頑張っていやしたからねぇ…。皆さんに褒めていただけてよかったでさぁ】

「ほらほら、二人とも。ベインこの後も訓練あるんだから早く始めるわよ」


 シーラはそう言うと、一人一人に星の形をしたチャームを渡した。


【わー!すごい綺麗なチャームだね!!お星さまだ!】


 フォルテの持つチャームを見ながらラソがめを輝かせる。


「俺たちにも?」


 ダルテの質問にシーラはウィンクして頷いた。


「実はソルがね、ラーシャ達の鱗を使ってチャーム作るんだけど私たちはどうする?って聞かれたからついでにお揃いで作って貰ったのよ」


「だから鱗が欲しいって…」


 フォルテが納得したように呟いた。

 学生の頃、かなりちょっかいを出していたのにちゃんと声をかけてくれるあたり、すごくいい奴だと思う。


「で、星のデザインにして貰ったのよ。“希望”の象徴らしくてね。なんかいいじゃない?」

「確かに大人になると希望ねぇもんな」

「ダルテ、あんたしっかり社会に揉まれてるわね」

「社会人辛い…」

「ダルテもお疲れ」


 ベインが苦笑しながら、ダルテを労う。


「学生の方が楽だったって思うよな。勉強とテストは最悪だったけど」


 フォルテの言葉に激しくシーラが苦笑して頷く。


「ずっと子供ならいいのにね。…ほら、フォルテ」


 シーラに促されて、フォルテはため息をつくとカバンから手袋を出してベインに差し出す。

 シーラからはニアとソルから高級火の魔石を贈られるのを聞いたから何となく渡しにくいが、仕方ない。


「え、俺に?」


 ベインが驚いて受け取ると、試しに嵌めてみた。

 黒いなめし革の手袋で薄いので手を動かしやすく、そしてかなり暖かい。

 すごくいい手袋なのがわかる。


「みんなでお金を出し合って買ったんだ。スノウコルドは寒いだろ?…まぁ、ニア達が用意してくれた魔石とは比べものにならないだろうけど、気休めに…」

「やべぇ!!めっちゃ嬉しい!!大事に使うぜ!ありがとうな」


 予想以上のベインの喜びように驚くフォルテ。

 魔石と比べたら全然高価じゃないのに…。


「大事に使ってよ?すごい悩んだんだからね?」

「そうだぜ?機能性とデザイン性両方を兼ね備えたやつ見つけるのすげぇ大変だったぜ」

「わかってるよ。俺のために選んでくれたのがすごい嬉しい」


 その言葉にフォルテは目を見開くと、小さく笑う。


「喜んでもらえてよかった」


 その言葉は小さ過ぎてベインには届かなかった。

 だが、その手袋はベインにとって、魔石よりもずっと高価で大切な宝物となった。

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