授業と実戦の違い
授業では竜は一切攻撃は禁止だったが、今回は違う。
敵にも注意を払わなければならないが、味方の攻撃も当たらないように注意しなければならない。
セツがウィングルに炎を放つが、ギリギリで躱わされその炎は下にいたルーキス達に向かって飛んでくる。
「上から炎!」
ラーシャの短い指示にすぐにルーキスが反応して、炎を避けた。
二年前のあの時とは違う動きにラーシャは、内心感動しながらも素早く周囲に目を走らせる。
【あいつを狙うぞ】
「了解」
今まさに翼を大きく羽ばたかせて、強風を巻き起こそうとしているウィングルに目をつけると、一気にルーキスは間合いを詰める。
ウィングルは慌ててルーキスから距離を取ろうと急上昇するが、それにルーキスもついて行く。
急上昇、急降下を繰り返し、引き離そうとするがルーキスも粘る。
【大丈夫か!?】
「これくらい…!余裕!!」
【いい心がけだ!】
ニッと笑うと、ウィングルが疲れたのか無理な飛び方をしなくなった。
撃つなら今しかない。
ルーキスは口を開けて光を溜め始める。
これでウィングルを仕留められる、とラーシャが確信しているとウィングルの延長線上にナイラがいるのに気づいた。
ルーキスの攻撃は真っ直ぐ放たれる光線だ。このままでは間違いなくナイラも光線で焼かれてしまう。
慌ててラーシャは通信石に触れた。
「ベイン!今すぐそこから急降下して!!ルーキスの光線がそこを通るから!」
『はぁ!?』
「早く!!」
ラーシャが怒鳴るのと、ルーキスが光線を放つのが同時だった。
目が眩むほどの光の線が一瞬で、ウィングルを貫きその身を焼く。
ナイラは間一髪避けられたようで、ラーシャはホッとした表情をする。
「間に合ってよかった…」
『“よかった”じゃねぇーよ!!!死ぬかと思ったわっ!』
ベインの怒鳴り声が通信石から鳴り響き、その声の大きさにラーシャが思わず顔を顰める。
「だから、ちゃんと危ないって言ったじゃない」
『もっと気をつけろよ!』
「はいはい…ベイン!後ろ!」
背後にウィングルが迫っているのを見て慌てて知らせると、すぐにベインが反応してナイラに指示を出しウィングルを撃退した。
「これでチャラね!」
ラーシャの言葉にベインは舌打ちをして通信を切った。
通信を終えた、ラーシャが他のウィングルをルーキスと共に仕留めているとセルジュとニクスが目に入った。
セルジュ達は木々のスレスレを低空飛行しながら、襲って来るウィングルを倒している。
強力な闇を操る能力があるニクスだが、その力が強い分、制約も強く闇がなければその能力を使うことが出来ない。
故に低く飛び影を作り出さなければならないのだ。
だが、制約があるのを感じさせない程ニクスの動きは余裕があり、安心して戦闘を見ていられる。
それはロベリエ達にも言えることで、セツは攻撃が荒いが、ロベリエが上手く指示を出してウィングルを確実に葬っていた。
時々、先ほどのように外して巻き添えを喰らいそうになることもあるが。
セツ、というよりもロベリエが戦闘に慣れているように見える。
冷静に戦場を見渡し分析をして、セツだけじゃなく時々ラーシャ達にまで指示が来るくらいだ。
「…ロベリエって本当に一学年上の先輩なのかな?」
【ん?なんでだ?】
「すごい戦闘慣れしてるじゃん?」
【確かに】
ラーシャとルーキスは首を傾げるが、今は戦闘に集中すべきだ。
『ウィングルが片付いて来たと思ったら今度はブレイズルチャが来たわよ!そう来なくっちゃね!!』
通信石からロベリエのウキウキした声が聞こえて来た。
ブレイズルチャはアインホークよりも大きな鳥型の魔物で火属性だ。
ラーシャはため息をつくと、すぐに表情を引き締めた。
「ルーキス、今度はブレイズルチャが来たってよ!覚悟はいい?」
【とっくに出来てる!!】
「よし、みんなよりもたくさん倒すよ!!」
ラーシャたちは気合を入れるとブレイズルチャの群れに突っ込んで行った。




