表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜使いのラーシャ  作者: 紅月
それぞれの覚悟と夢と試験
13/764

全部夕日のせい

 夕日に照らされた黒髪の少年の姿を見てすぐにセルジュだと気づいた。


「セルジュ!こんなところでどうしたの?」


 日も落ちてきてかなり冷え込んできているというのに先に帰ったはずのセルジュは、ずっとここで待っていたのだろうか。彼の鼻と頬は真っ赤になっていた。


「ほっぺがこんなに冷たくなってる。ずっとここにいたの?」


 自分の両頬を手で包み込むように触れて首を傾げるラーシャにセルジュは眉間に皺を寄せた。


「…なんで」


 掠れた小さな声でよく聞こえずに、えっ、と聞き返す。


「なんで助けた?」


 素っ気ないその言葉にラーシャはじっとセルジュを見返した。

 父親のリライが五年前から変わってしまったように、セルジュも変わってしまった。どんなに辛い事があっても全部、一人で背負ってしまうようになっ

た。

 色んな人が助け出そうと手を差し伸べてもその手を振り払ってしまう。

 そんな彼を見ていると悲しくなる。

 だから助けずにはいられない。


「おい」

「ん?何?」

「いつまで触ってる気だ」

「あ…」


 ラーシャはセルジュの頬から手を放す。


「少しは暖かくなった?」

「別に。…質問」


 セルジュに催促されてラーシャは困ったように頬を掻く。


「フォルテのあの言葉とか態度見てたらイライラしてきちゃって、つい鞄を投げちゃった」


 セルジュが辛そうで見ていられなかった。なんて本当のことを言ったらきっと、セルジュは怒るから。


「助けたんじゃなくて、私が嫌だったの」

「…そうか。でも、今度から何もしなくてもいい」


 どうやらセルジュには嘘がバレてしまったようだった。ラーシャは肩をすくめると、わかった、と頷いた。それを見て、セルジュは帰ろうとラーシャに背を向ける。


「でも」

「?」


 少し歩いたところでラーシャに声をかけられセルジュが立ち止まる。


「フォルテに殴られそうになった私を助けようとしてくれたから」


 ラーシャが少し照れ臭そうに笑みを浮かべた。


「今度は私がセルジュを助けるね。ありがとう」

「…!」


 バッとラーシャから勢いよく顔を逸らすと、セルジュは走り出す。

 後ろからラーシャが何か言っているが、気にしない。


 顔が熱い…。顔が赤い気もしたけど、全部夕日のせいだ。


 セルジュは自分にそう言い聞かせて、父親のいる家へと帰る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ