乱入者
ゼンがラーシャから離れるとすぐに、ニアとソルが駆け寄って来た。
ニアに関しては顔色がさっきまでのラーシャよりもずっと悪いし、身体が震えていた。
「ニア、大丈夫?」
「大丈夫じゃありませんわ…!スノウコルドがどれだけ危険な場所かわかっていますか!?」
ニアの質問にラーシャは言葉を詰まらせた。
ゼンやデイル、辞退していった者達を見ていれば危険な場所なのはわかる。わかるが、どこが危険なのかと聞かれればわからない。
「…父さんから聞いた事あるから危険な場所なのは知ってる。スノウコルドは雪と氷に覆われていて過酷な環境だからか、そこに棲む魔物はみんな他よりも強くて凶暴で人間を捕食するのは当たり前だって」
「ついでに言うと、ジルジや他の地域は魔物は街中まで入ってこないけど、スノウコルドは別で平気で街中に入って来るんだって」
セルジュの言葉を引き継いで言ったのは、ラーシャ達以外の辞退しなかった女性。
突然、話に入って来た女性にラーシャ達が驚いていると女性は笑って謝った。
「あぁ、急にごめんなさいね?私、ロベリエ。この子は相棒のセツよ。去年学校を卒業したから貴方達の一つ上の先輩かな?…去年は体調不良で試験受けられなくて」
ロベリエはそう言って肩を竦めると、セツと紹介された赤竜が残念そうに首を横に振った。
【試験前日に風邪を引くなんて全くツイてないぜ】
「ねー。でも今年は合格できてよかったよね。みんなさ、スノウコルドに行ったら死ぬとか言ってるけど、私たちはこれから騎士団に入団するんだよ?この国に命を捧げる覚悟なのに、これくらいでビビちゃダメだよね。あの人達はここで辞退して正解だよ。いざって時に命惜しくなってきっと足手纏いになるだけだからさ」
ニコニコ笑いながら言うロベリエにラーシャ達がちょっと引いていると、それに気づいたセツがロベリエの頭を突く。
【嬢ちゃん達が引いてるからそれくらいにしてやれよ】
「え?…あぁ、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって!じゃあまた明日ね!お先に」
セツを引き連れて去っていくロベリエを見送りながらソルがため息をついた。
「なんかすごい嵐みたいな人だったな…」
「圧がすごい」
ソルに同意しながらラーシャはそう言うと、あっ、と思い出したように声を上げた。
「セルジュ、ベイン。今日の夜空いてる?ゼン兄が二人を連れて星見の砂浜に来て欲しいって」
「セルジュはわかるけど…俺も?」
ベインが不思議そうな顔をして言う。
「俺、あんまりお前らと仲良くなかったからお前の兄ちゃんに誘われる意味がよくわかんないんだけど…」
「まぁ、今までは仲良くなったけど、これからは同じ隊になるかもしれない仲間なんだから仲良くやっていこうよ。…とにかく夜は空いてる?」
ラーシャの言葉にセルジュとベインは頷いた。
「何やるかわからないけど、とりあえず夜集合ね!」
ラーシャ達三人が盛り上がる中、ニアが不安そうな顔をしているのに気づいてソルが隣まで来ると、肩を叩いた。
「不安なのはわかるけど、今からニアがそんな顔してたらラーシャ達も不安になるだろ?」
「それは…そうなのですけど…。でも」
「そんなに心配ならさ、俺たちは俺たちでラーシャ達を応援できることを探してみようぜ」
「え?」
「俺たちはここで見守ってやることしかできないから、何か俺たちなりに力になりたいじゃん」
ソルの提案にニアが目を輝かせて頷いた。
「そうですわね!ソルにしてはいいこと言いますわね!」
「え、今の褒められてるよね?え?」
困惑するソルに悪戯っぽい笑みを浮かべるとニアはラーシャ達の会話に入って行く。
ソルはそれを見てため息をついた後、苦笑する。
「全く…でも、まぁ元気が出たみたいでよかった」




