覚悟を決めたなら
「んー!やっぱり先生の目を気にしないでルーキスに騎乗できるのは最高!!」
ラーシャはルーキスの背に乗りながら満足そうに言った。
【そんなに気にして無かっただろ】
「そんな事ないよ!気にしてたって!…まぁ、でも、もし先生に捕まったら絶対に無許可で竜に乗ってる他の奴らを告発して道連れにする気だったけどね」
そう言って黒い笑みを浮かべるラーシャにルーキスはため息をついた。
【品行方正からだいぶかけ離れてるぞ】
「おっと、危ない」
ラーシャは頬をペチペチ叩きながら黒い笑みを消し去る。
「私はどっからどう見ても品行方正でしょ?」
【はいはい】
「ねぇ、ルーキス」
【ん?】
「ニアの夢、どうにか叶えられないかな?」
ラーシャの言葉にルーキスは少し考えて首を横に振った。
【こればっかりは、本人の問題だ。他人が何かを言ったところでどうにかなる問題じゃない】
「そうだけどさ…」
【本当に叶えたかったらどんな障害でも乗り越えるだろ。…オレたちみたいに】
ラーシャはちょっと驚いた顔をした後、すぐに笑顔になった。
「そうだね。それに意外とニアは頑固だしね。きっと、何か企んでるかもそれないね」
【あぁ、エルも食えない奴だからな。あいつも何か考えてるかもしれないな】
ラーシャは頷いた。
ラーシャには、ニアの家の事情がよくわからない。家のために好きでもない人と結婚しなければならないのも、夢を諦めなければいけないのも理解ができない。
そんなものよりずっとずっと、ニアの気持ちの方が絶対大切だと思うから。
「ニアがもし覚悟を決めたら全力で応援してあげよう」
【それでいいんじゃないか?きっとニアも喜ぶ】
「だよね」
【ほら、着いたぞ。しっかり捕まってろよ】
「了解!!」
ラーシャがギュッと抱きつくとルーキスは、すぐに急降下して家の前に舞い降りた。
ラーシャがルーキスから降りると、家からシューリカとハクレンが出てきた。
「お帰りなさい、ラーシャ、ルーキス。楽しかった?」
「ただいま、おばあちゃん!すっごい楽しかった!」
【魔物の肉うまかった】
ルーキスの言葉を聞いて、ハクレンが涎を出すのを見てシューリカがクスクス笑う。
「あらあら、ハクレンったら。今度魔物の肉でも狩ってきましょうか」
「え!?おばあちゃんが!?」
ラーシャが驚いてシューリカを凝視したが、シューリカは笑ってそれを否定だ。
「もちろん、ゼンが狩って来るに決まってるでしょう?…ラーシャも騎士団になったら狩れるわねぇ。…さ、中に入りなさい」
シューリカは、ふふ、と笑いながら先に家の中に入って行く。




