少年漫画ヲタは異世界がわからない。③
「イセカイって何ですか?」俺の質問は暗城さんを困惑させたらしい。
「ええーーーーーっ!!」暗城さんは驚いて立ち上がり勢いで椅子が倒れた。
「い、異世界わからないんですか!!!」
「異世界とは異なる世界と書いて異世界です。ライトノベルの定番のストーリーではありますがライトノベルを知らなくてもなんとなくわかるでしょう!」
なんか暗城さんに怒られた。泣きそう。
「いいね!!!!!!!」
ビームの女神様が叫んだ。
「どうやらほんとに君は少年漫画脳らしいな!そのくらい極端な知識を持つ者を待っていたよ!少年!」
「そして君がいてよかったよ少女!君は異世界をわかっていそうだ!」
「おっと、そういえば君たちの名前を聞いてなかったな。」
「輝崎太陽です。高校一年です。」
「暗城彩月です。私も高校一年です。」
「よろしく。」
「今度は私から質問いいでしょうか?」今度は暗城さんから質問があるみたいだ。
「なんだい?」
「なぜ私たちなのでしょうか?もっと軍の人や戦いの知識がある人の方がいいのでは?」
「それをしない理由が2つある。1つ目はそういう人たちが行っても敵は魔法などを使う者たち。太刀打ちできない。2つ目はこの扉に特殊能力があるからだ。」
「「と、特殊能力!!」」俺たちは驚いた。
「ああ、この扉を本と一緒に通ることでその本の登場人物から能力を得ることができるんだ。例えばビームを放つキャラクターが大活躍する巻と一緒に入れば高確率でビームを放てるようになる。」
「ビーム!!!!」
「君はビーム大好きだな。」
「じゃ、じゃあ体が伸びるやつとか分身とか幽霊を裁く刀とかも可能ってことですかっ!!!」
「ああ可能だ。」
「ではなぜ軍の人や戦いの知識がある人に本を持たせないのですか?」暗城さんが冷静に質問した。
「いいところに気づくね彩月。それをやらない理由は簡単さ。にわかじゃ力を使いこなせない。」
「だから私はアニメショップの店員となり品定めいや客定めをしていたのさ。そこに来たのが君たちだ。理由はこれでいいかな。」
なるほど極端な知識を求めていた理由がなんとなくわかった。暗城さんは唖然としている。だけどどことなく嬉しそうな表情だ。気持ちはわかる。だってこれ異世界でヒーローになってくれと言われているようなものだ。
「あ、そういえば俺ライトノベル読んだことないからよくわからないんだけど異世界と今いるこの世界は行き来できるんですか?」ふと思った重要な疑問を口に出してみた。
「大体の場合はできないですね。」暗城さんが説明してくれた。
「その点については心配しなくていい。異世界でこっちに戻りたいと思いながらどこかの扉を開けば戻って来れる。」
「じゃあ、早速だが行ってもらうとするかな。今日は体験気分で行ってくれ。本当に異世界のために戦ってくれるかは今日の体験が終わったら聞かせてくれ。」
「「はい!」」今度は暗城さんだけでなく俺も即答した。
全員椅子から立って部屋の端っこのドアの前に立つ。
「おっとそうだ。君たちにこれを渡しておこう。これが今回の君たちの能力の源だ。」俺には少年漫画のコミック、暗城さんにはライトノベルが一冊ずつ渡された。
「これって…」
「ああ。君たちが大人買いした本の内の一冊だ。」
「さあ扉を開けるぞ。」
開かれた扉の先には村の風景が見える。
「さあ、行きましょう!」暗城さんが振り向いて俺の手を掴む。そして二人で異世界に入った。