お嬢様はムチが好き!!
興味を持ってくださりありがとうございます。
私は生まれついてのいじめっ子よ。
私に逆らうなんて許さないわ絶対に。
高校2年生になったわ。担任の教師が教壇で何かをさえずっている。どうせ必要事項を言っているだけでしょ。学期が変わるごとに同じようなことを喋っているけど無駄なことに気付いてほしいわ。
私は足を組みながらそんなことを無駄に考えていた。本当にただ無駄なリソース消費である。もっと価値のあることを考えましょ。
頭を切り替える。
今年のおもちゃを考えないと。可哀そうな子がいいわ。どの子をいじめようかしら。
私の家がこの私立学校に多額の寄付をしている関係もあり、私に逆らえる教師はいないわ。何をしても許される。なんて素敵なんでしょう。笑っちゃうわ。
座席も私に配慮してなのか窓際の最後尾から外れたことがないわ。ここからなら全員を視界に入れることができる。気分が良い席ね。
「……あの子にしよう」
決めたわ、あの教室の真ん中あたりのシャーペンで背中をつつかれている彼女。あのやめてほしいのにそれを主張することができない弱者。可哀そうな可哀そうな彼女。彼女に決定ね。顔がにやけちゃうわ。
なんて恐ろしいのでしょう。ただでさえいじめられている彼女をさらに追い込もうなんて人の血が通ってないのでしょうか。ただ有子の思惑とは別に可哀そうな彼女は転換点を迎えます。
放課後
今日は午前で学校は終わり。このまま部活動に勤しんだりお喋りをしたりするのでしょうね。例の可哀そうな彼女も漏れなくお喋りに興じているみたい。あれをお喋りと呼ぶのならね。笑みが止まらないわ。
「百夜さんごめんねペン刺しちゃって、ほんと悪気はないんだよ」
「なんかペンが長いから当てちゃいやすいとか言ってたよねー。駄目だよぉ百夜さんに当てちゃぁ」
「…………」
「許してくれるよね。別にわざとじゃないし。次も当たっちゃったらごめんね、先に謝っとくね」
「当てない努力しなよぉー笑っちゃうじゃん」
あの子たちは性格が悪いのね。実にユニークよ。ただ某百夜さんは私のおもちゃになったのだからこれ以上の手出しはさせないわ。私の獲物よ。
「何をしているのかしら、邪魔よ、散りなさい」
いじめっ子に言い捨てる。逆らってもいいわよ。ただ私は私よりいきってる子は嫌いよ。あらゆる手段を使って不幸にさせるわ。
「あ、ご、ごめんなさい、龍々院さん……」
「す、すすすいません、ご、ごめんなさい」
あら、彼女たちはしっかりと私のことを知っていたようね。少しだけ残念ね……
まあいいわ。この物足りない気持ちは百夜さんを使って晴らすとしましょう。
「行くわよ」
「……え?」
彼女の腕を持って教室を抜け出す。そしてサロンに向かった。
この学校には私専用の部屋がある。私の許可がなければ誰も使うことができない。羨ましいでしょ。
サロンに入り私はテーブルの奥の席に座る、彼女は扉の前で突っ立ている。察しが悪いわね。
「座りなさい」
話があるから連れてきたというのに席に着かないとはどういうことかしら。
それくらい察しなさいよ頭悪いわね。
…………ん?なぜ床に座るのかしら?
ちょっと待って良く分からないわ。どうしてかしら。
テーブルで顔が見えないわ。何考えているのかしら。
脳みそ入っているのかしら。馬鹿じゃないの。
床に座るなんて汚いわ。気にしなさいよ馬鹿。
「椅子に座りなさい」
びくっ。
彼女は声をかけられると体を震わした。
彼女はそのまま震えながら、席に着く。
「私は龍々院有子よ」
「…………え」
何かしら。この子は最低限の教養もないのかしら。
名乗られたら名乗り返すでしょ。少しは考えなさいよ。
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿。
「名を名乗りなさい。私はあなたを知らないわ」
そこまで言ってようやく気付いたようだ。
何を食べて生きたらここまで頭の働きが悪くなるのかしら。
もう純粋に疑問だわ。今度庶民の研究でもしようかしら。冗談だけど。
そこまで無駄なことに割くリソースはないわ。
私の時間は貴重だもの。馬鹿じゃないの。
「あ、あの、百夜栞です」
百夜栞?何か聞いたことのある名ね。
考えるわ。待ちなさい。
あっ、思い出した。特待生の一人ね。学費免除で通っているのではなかったかしら。
貧しい家なのね同情するわ。
私の同情を買えるなんて、光栄なことでしょう。
私を崇めなさい。称えなさい。
「そう、栞、これから私たちは友達よ。わかったかしら」
あなたは私の友達よ。
私以外にいじめられることがあってはだめよ。
馬鹿でもこれくらいわかるでしょ。
あなたは私のサンドバックになってなさい。
「え、えっ、でも……」
「うるさいわ、決定事項よ、黙りなさい、はい以外認めないわ。わかったかしら」
「…………はい」
うるさいのよ。私が決めたことに逆らうんじゃないわよ。
私が白って言ったら白。痛くないって言ったら痛くない。
私が絶対の法なんだから。
あら?法の下の平等ってこういうことなのかしら。
私以外は私のおもちゃなんだから。うふふ。冗談よ。
「ランチにするわ。これで私が喜びそうなものを買ってきてくださるかしら」
「……えっと」
私は一万円札を彼女に渡す。無理難題ね。
私がこの学校で買えるようなもので満足するはずがないのに。
にやけちゃう。
「お願いね」
「はい」
彼女は部屋から出て行った。何を買ってくるのかしら。
色々と楽しみね。
「江波。紅茶の用意をしなさい」
「はいお嬢様」
いきなり現れる。こいついつもどこに潜んでいるのかしら。
執事の嗜みなのか紅茶を入れるのがとても上手よ。私より美味しく紅茶を入れられる気がするわ。
ん?なぜ2セット用意しているのだ?私が飲みたいと頼んだのになぜ?
紅茶と一緒に食べるサンドイッチも2セットずつあるわ。私2つも食べられないわよ。
疑問を問いかけようとした時。
かちゃ
ドアノブの動く音がした。彼女が帰ってきたのでしょう。
いつの間に江波がいない。どこに消えたのかしら。
彼女の分を用意したのね。いらないわよ全く。
でもまあわざわざ取り上げてごみにするのも全く意味がないし。
しょうがないわね、与えましょう。
別に寛大な私が施しを与えようとどうってことないわ。
「お帰りなさい。紅茶を用意したわ。何を買ってきてくれたのかしら」
彼女はまたびっくりしたのかまた震える。
携帯電話より振動しているのではないかしら。面白いわね。
私は彼女のセンスが見たいのよ。何を買ってきたのかしら。
「あのかつ丼を……」
「……………………かつ丼?」
かつ丼って何かしら。聞いたことがないわ。
単純に考えてお肉を揚げたカツをご飯の上に乗せるのかしら?
んーーーー?
よく分からないわ。未知との遭遇を果たしてしまったわ。
美味しいのかしら?残念なことに物凄い気になるわ。
少し悔しいけれど。まあいいでしょう。
「いただけるかしら」
「……え!?こちらでよろしいんですか!?」
「良いと思ったから買ったのでしょう?何を言っているのよ」
「ほぇ……あっ、はい。あ、あとお金を」
「あげるわ、取っときなさい」
「えっ、でも」
「一万円未満は持ち歩かないようにしているのよ」
こうまで言わないと持って帰らないのかしら。
実際お金を無駄にばらまくことは滅多にしないが、今回は珍しいものを持ってきてくれたお礼でもある。
それくらいあげるわ。それよりかつ丼が早く食べたいのよ。
「紅茶を飲みなさい。サンドイッチもあげるわ、食べなさい」
彼女の返事を待たずにかつ丼を食べ始める。
もぐもぐ、ごくん、もぐもぐもぐもぐ。
意外と美味しいわね。たまにはジャンクフードが食べたくなるみたいな感覚なのかしら。
人生で片手で数えるほどしか食べたことないけど。
もぐもぐ、ごくん、もぐもぐもぐもぐ。
豚のロース肉かしら。少し安っぽいけど学校で食べるものならこんなものかしら。
逆にあまりにも高い肉だと他の食材の良さを消してしまったりするのかも。予想だけど。
卵は甘い味付けをしているから飽きがこないよう工夫しているのね。
きっと和風だしに醤油と砂糖を入れたお汁を使っているのだと思うわ。
意外と甘い卵も美味しいのね。今までしょっぱい卵が好みだったけど、甘いのもありね。
卵でとじられているから少し衣が柔らかいけど。卵と別に乗せてかつのサクサク感があっても面白そうね。
もぐもぐ、ごくん、もぐもぐもぐもぐ。
ご飯もあまじょっぱいお汁を吸ってそれ自体が美味しい状態になっているわね。
海外では口内調味を行わない文化が一般的だし、このご飯単体で考えるなら海外文化に随伴するといってもいいのかもしれないわ。
ただ少し味に飽きがこないようにキャベツなどの付け合わせがあると良いかもね。
もぐもぐ、ごくん、かちゃ、ん?
箸が器にぶつかった。食べ終わってしまった。
「ふぅーまあまあね」
彼女を見る。彼女は初めて私の前で笑顔を見せていた。
まあ、江波が入れた紅茶と、我が家の経営しているカフェのサンドイッチが美味しくないわけがないわ。
私も紅茶を飲もうかしら。まあいつもどおりね。
「そんなに美味しいならもう1セットサンドイッチあげるわ。持って帰りなさい」
「えっ!良いんですか!」
急に元気が良くなったわね。どうでもいいけど。
お読みいただきありがとうございます。




