初めての彼氏 ─6─
「本当にいいんですか? 今日もご馳走になっちゃって……」
今回のお会計も、海原が持ってくれた。毎回こうだと恐縮してしまう。
「ええから。ちょっとは格好つけさせてや」
いや、十分にカッコイイですから。と心の中で呟く。
「え……マジで?」
突然頬を赤らめ、照れながら聞いてくる海原。アタシには何のことやら訳が分からなかった。小首を傾げて海原をジッと見つめると、余計に真っ赤になって顔を背ける。
「……まさか天然?」
ポツリと呟くとこちらに向き直り、今度は堪らなく魅力的な微笑を見せてきた。
「今、十分にカッコイイってゆうてくれたやんな?」
「え? 言ってな……」
ま……まさか。また心の声ダダ漏れ!? 口に出して言ってしまったのだろうか? いや、そんな筈は────
「無意識なん? ……ヤバイな」
ヤバイって…… 引いたって事? 海原さんに嫌われた?
アタシは誤解を解くよう、懸命に言い訳した。
「ち、違うんです。アタシ心の声が外に出ちゃうってゆうか…… 無意識に口に出してるってゆうか…… あまりにも海原さんがカッコよくて、つい────っ!」
必死の弁明も、途中で遮られる。温かくて柔らかくて、頭の中が痺れるような不思議な感覚。話したくても話せない。唇で唇を塞がれていたから。
一旦離れた唇は、すぐにまた塞がれた。今度はアタシの背中と頭を優しく包みながらのキス。決して荒々しくはないけれど、繋がった部分から熱い想いと共に流れ込んでくる情熱が、アタシの身体中の力を奪った。
崩れ落ちそうになった身体をしっかりと受け止めてくれた海原は、ギュッとアタシを抱きしめ耳元で囁く。
「可愛い事ばっかりゆうてたら理性効かんようになるから、気を付けてな?」
もう、支えられて立っているのが精一杯だった。なにせ、初めてのキス──── ファーストキスだったのだから。
この日はどうやって家に帰ったかも記憶になかった。オトンのモジモジ攻撃も、どうかわしたのかさえ分からない。
ただ、いつまでも唇に残った感触は、消える事はなかった。




