初めての彼氏 ─4─
「あ……いえっ、何でもないんです!」
慌てて手を振り誤魔化そうとするも、四ノ宮は容赦なく攻めてくる。
「何でよー? ゆえばいいやん。海原くんメチャクチャ喜ぶで絶対」
「わーわーわー! もう! ほんっとにやめてください!」
完全にオモチャにされてる感はあったが、アタシは必死で阻止しようと試みる。四ノ宮の性格上、本気で海原に話すつもりではないだろうが、それでも万が一、ということもある。
女同士ガヤガヤとやっていると、海原がアタシの背後に周り、肩に手を置いた。
「もうそれぐらいにしといてや。初めて付き合えた日やねんから」
付き合った日ではなく、付き合えた日と言われた事に、愛されてると感じたのはアタシの勘違いだろうか。
「はいはい、もうお邪魔しませんよ。あんだけ派手に告白したんやから今日は朝まで一緒におったら?」
ニヤリとしながら最後までからかう四ノ宮に、アタシは茹で上がった顔で睨みつけた。
それでも四ノ宮は、いつまでもニヤニヤしたままで、じゃあ、と手を上げ帰って行った。
「麗美ちゃん、初めて一緒に行った店、行けへん?」
あのモツ鍋と梅酒シャーベットの美味しかったお店。もちろん海原と一緒なら、断る理由もない。
「はい、喜んで!」
相変わらず混雑している店内は、活気に満ち溢れていた。カウンターのすみっこの席を二つ確保した私達は、「ほい、今日の1品。鶏皮とピーマンのポン酢和え」と忙しげにちょこまかと動く店主に出された1品にさっそく箸を付ける。
「美味しい!」
鶏皮の脂はカリカリに焼く事によって、噛めば噛むほどに旨みが染み出す。ピーマンのほんのり苦味とポン酢のさっぱりとした味付けが、すべてを調和させていた。
「これ、美味しいですね。今度家でもやってみよう」
ママが。というセリフは、心の中に留めておいた。そして、ふと海原の小鉢に視線を落とす。
「…………海原さん。まさか……」
隣の海原の顔を覗き込むように見てみると、恥ずかしそうに目を逸らす。それがアタシの意地悪心をくすぐった。
「あれ~? まさか海原さん、ピーマン食べれないんじゃ? いや、まさかですよね子供じゃないんだから。あ、あれですか? 好きなものは最後に取っておくっていう───」
最後まで言い切らないうちに海原が、逸らしていた視線の照準をアタシに合わせた。




