初めての彼氏 ─2─
最後まで言い切る前に、王子様が(アタシには本当にそう見えた)アタシと五百城の間に腕を差し出し遮った。
「海原……さん?」
────また助けにきてくれたの?
張り詰めていた気持ちが一気に和らぎ、ホッとすると同時に再び涙が溢れそうになる。
「五百城、それから皆。ごめん、ムーン•アイランドのアイドル独り占めして」
あ……アイドル!?
「でもちゃんと真剣に付き合っていくから。大事にするから見守っといてくれへんかな」
嘘……そんな堂々と? 確かにウチの会社は社内恋愛禁止ではないけど……
シーンと静まり返った空気がいたたまれない。ここは、『アタシの為にケンカはやめて!』と冗談に持っていくべきか。それとも、『今日でアイドル辞めます』と言ってボールペンでも置いてこの場をフェードアウトするか……
消えてなくなりたい程の気まずさの中で、突然ペチペチペチと何ともマヌケな音が静寂を打ち破った。
「おめでとうございます。お幸せに~」
間延びした口調で祝福の言葉をかけながら、ペチペチと拍手するジミー。パチパチではなく、ペチペチと音を鳴らす所がジミーらしい。
それがきっかけとなり、一気に空気が変わった。
「おめでとー!」
「お幸せに…って結婚会見じゃないんやから」
「くそー…どうやってゲットしたんだよ」
「いつか奪ってやる!」
先程までの緊迫した雰囲気が、柔らかいものに変化していく。アタシは改めて実感した。
────海原さんの彼女になったんだ。
彼の顔を、そして彼はアタシの顔を見て、互いに自然と笑みが零れた。
休憩時間も終わってしまい、皆が席に着こうとした時にふと視界に入った五百城は、眼鏡に光が反射してよくは見えなかったが、海原を睨みつけているようにも見えた。




