初めての彼氏 ─1─
次々と矢継ぎ早に質問が飛んでくる。
「高木さん、海原さんと付き合ってんの!?」
「なんで海原なん!?」
「お金目当て?」
「いつからそんな仲やったん?」
「人前でプロポーズされたんやて?」
「海原に騙されたんか!?」
「……なんで裏切った?」
所々、反論に値する質問もありはしたが、何よりも最後の質問が引っかかった。
「裏切った……?」
声のした方へ顔を巡らせると、少し陰気な感じのする社員……社員Aがいた。
長い前髪は半分程目を覆い、黒縁のメガネを掛け、時折見え隠れするその奥の眼光は細く鋭く釣り上がっている。この人もまた、話すらした事のない男性だった。
アタシがブサイクだった頃は、社内で話をする男性と言えば、部長と海原くらいだった。最も、部長とは話をするというよりも、ただただ嫌味を言われ続けていただけの事。海原は、そんなアタシを気の毒に思ったのか、誰にでも分け隔てなく接する性格だからか、はたまたその両方かは定かではないが、昔から気さくに話しかけてくれる唯一の男性社員だった。
そんな事情で、会話すらした事のない社員A。名前も知らない社員Aから、何故裏切り者扱いされなければいけないのか。アタシにはさっぱり分からなかった。
周りの視線が彼に集まる中、据わった目でアタシを見ると、ようやく口を開いた。
「僕が……どれだけ高木さんの事を想ってきたか─── ずっと……見守ってきたのに。高木さんは、誰かの物になってはいけない人なのに……なんで……」
えー怖い。思いっきりストーカーフラグ立ってるよね? 独りよがりもいいとこだよね? アタシはアイドルでもなんでもない一般人なんですけど? てか今時アイドルだって恋愛しまくってますよー?
実際には言えない言葉の数々を、脳内で呟きまくる。すると、周りがガヤつき始めたことに気付いた。女子社員達が、顔を見合わせヒソヒソと話している。ヒソヒソと言っても、全然聞こえる範囲にいるので会話は全て耳に入ってきた。
「玲於様も高木さんのファンやってんな」
「えー、ショックなんやけど!」
「五百城の方がお似合いやのにな」
「玲於様~!ヤダー」
まとめてみると、社員Aは五百城 玲於という珍しい名前らしい。そして、非常に人気のある冷血王子キャラ? で、アタシのファンである。という事までは分かった。でも……恋愛はアタシの自由だ。彼にとやかく言われる筋合いは、ない。
アタシは一呼吸つくと腰を上げ、五百城の目の前に立った。
「アタシ、海原さんが────」




