美人は三文の得!? ─9─
「俺がやるから気安くさわらんといてくれるかな」
語気を強め店員を一瞥すると、海原はアタシの背中を摩ってくれた。
「ごめんな、大丈夫?」
心配そうに覗き込む彼に、うんうん、と頷き水を一口飲むと、ようやく咳も治まってきた。
「大丈夫ですから。座って下さい」
周りから注目の的になっているのは気付いていた。これ以上は目立ちたくない。
それを察したのかどうかは分からないが、海原も大人しく席についてくれた。
「ビックリさせてごめん」
申し訳なさそうに謝る海原に、アタシはもう自分を偽る事は出来なかった。
「アタシ……海原さんが好きです」
そもそも恋に不慣れなアタシが、駆け引きなんて出来るはずもないんだ。好きなら好きと、ただそれだけを素直に伝えるだけで良かったんだ。
「……ホンマに?」
飛び出しそうなくらいに目を見開いて、口もポカンと開けている海原を見て、アタシはプッと吹き出してしまう。
「ホンマです。昨日のLINEも、実は凄く嬉しかったです」
やっともやもやしていた胸のつかえが取れた。あれこれ策を巡らせ思い悩んでいたのが嘘のようだ。
海原を愛おしげに見つめるアタシの視線に、彼もようやく状況を理解できたようだ。満面の笑みをアタシに向けると、先程の店員を呼んだ。
「この子、俺のもんやから。もう髪の毛一本たりとも触らんといてな」
会社の近くのお蕎麦屋さん。ジミーや先輩方、そしてアタシは気が付かなかったが、他にもチラホラと同じ会社の人達もいたようだ。
そんな場所で堂々と言ってのけた海原は、この後の事態を想像できていたのだろうか……




