美人は三文の得!? ─8─
「お待たせしましたー。天ざる蕎麦と山菜柚子蕎麦です」
その声にハッとし、瞬きの回数を増やして潤んだ目を落ち着かせる。そして目が点になった。
「麗美ちゃん……そんなに頼んでたっけ?」
海原が驚くのも無理はない。アタシだってビックリだ。目の前に、蕎麦が見えないくらい山菜がのっていて、その横には大根、里芋、蓮根、人参を炊き合わせたおばんざい。さらには珈琲ゼリー善哉まで置いてあった。
「あ、あの……アタシこんなに頼んでませんけど」
運んできてくれた男性の店員に訴えると、
「今日はレディースデーなのでサービスです」
との答え。それならば、と礼を言い、素直に頂戴することにしたのはいいけれど……
周りを見渡しても、そんなサービスを受けている女性は1人もいない。海原も怪訝そうに、
「そんなんどこにも書いてないけどなぁ…」
と首を傾げていた。
「また昨日みたいに、麗美ちゃんだけのサービスなんちゃう? 美人は得やな」
「え……でも、こんなに食べれません。海原さん手伝って下さい」
と応援を要請し、しばらく食べる事に集中した。ようやく半分程食べ終わると、唐突に海原が話し始めた。
「俺のこと、嫌い?」
危うく蕎麦が鼻から出るところだった。口を押さえ激しくむせる。海原が慌てて水を差し出そうとしてくれたが、その前に先ほどの店員がすばやくやってきて、新しいおしぼりと水を差し出し、「大丈夫ですか?」と背中を摩ってきた。
何そのサービス。ちょっと怖い……と思っても、咳がとまらず断ることもできない。すると海原が、険しい表情で立ち上がり、店員を押し退けた。




