美人は三文の得!? ─7─
何も言わず、ただひたすらに前を見て歩く海原に、アタシは声さえかけれなかった。
お蕎麦屋さんは混雑寸前で、アタシ達が入ると満席になった。
2人席に腰を下ろそうとした時、店の奥からキャピキャピとした騒がしい女性陣の声が───
「あれ? 月島くんちゃう?」
ようやく海原が口を開いた。顔を巡らせると、奥の4人掛けのテーブルに、ジミー。そしてその横、前、斜め前に会社の女性先輩方が着座していた。
アタシの視線に気付いたのか、気まずそうな表情をしながら片手を上げ、海原に向かって頭を下げる。
「月島くんも、高……麗美ちゃんと同じ状態やってんで」
「え?」
「昼休みになった途端、行列。某アイドルグループの握手会みたいやったわ」
……それもいつまでたっても慣れない。だってアタシには、自分の顔もジミーの顔も、どう見たってイケてない種族にしか見えないのだから。
注文を済ませ、一瞬2人だけの空気になると、独り言にしてはハッキリとした声で、そっぽを向いたまま海原が言う。
「俺も月島くんみたいにイケメンやったら、麗美ちゃんに振り向いてもらえたんかなー…」
ギョギョギョ。お蕎麦屋さんでこのセリフ。またアタシを酸欠にするつもりなのか。
「昨日のLINE、冗談じゃないで。気まずいのはわかるけど、嫌やったらハッキリゆうてくれたらいいから避けんのだけはやめてほしいな。結構へこむから、さ」
……バレてたんだ。さりげなく避けてたつもりが相手にバレバレだったと思うと、恥ずかしくもなってしまう。今も約束なんてしていないにも関わらず、アタシの危機を察して連れ出してくれたというのに。
「ごめん……なさい。でも……嫌とかじゃ、ないんです」
海原の顔が見れなくて、アタシは俯いたまま声を絞り出した。
「ただ……アタシ、そういうの慣れてなくて…… どうしたらいいのか……」
また、目の奥が熱くなってくるのが分かる。一体アタシの涙腺どうしたのかな。海原といると、どうしようもなく感情が高ぶって泣きそうになる。思わせぶり、はどこか遠く彼方に消え去ってしまった。




