美人は三文の得!? ─6─
昼休みを知らせる音楽が社内に響き、アタシはフゥーっと深く息を吐いた。そうすることで、いかに呼吸が浅かったかを知る。
今日は朝から大変だった。アタシと瓜二つの顔をしたオトンの顔を見るのが気まずく、海原や奈々に会うのも避けていた。さりげなく、あからさまでもなく、自然に人を避けるのはなかなかに難しい技だった。
海原とは、あのLINE以降、やり取りもしていない。どんな顔をして会えばいいのかわからずに、昼休みにまでなってしまった。奈々も然り。
堂々と宣戦布告されたものの、海原はアタシに気がある……と思う。どうだ、ザマァみろ! とはさすがに思えなかった。
「やっぱりアタシはまだ、ブサイクの感覚から抜け出せてないなぁ…」
ポソリと呟くと、独特のダミ声が真後ろから聞こえた。
「なんや、誰がブサイクやて?」
振り向きたくない。振り向いてはいけない。でも、振り向かないわけにも……
アタシは引きつった笑みを貼り付け、そっと後ろを振り向いた。
「──部長、何か御用ですか?」
「あのな、昼飯でも一緒にどうかと思て」
う……… 行きたくない。なんと言って断ろうかと考えていると───
「高木さん、新しくできたパスタのお店、行かへん?」
部長の後ろから、名前も思い出せない、話すらした事のない先輩男性が誘いをかけてきた。
部長の異様な存在感で気づかなかったが、その後ろにズラリと───ザッと見ただけでも5、6人の男性が並んでいたことに、ようやく気がついた。
口々に昼食のお誘い。中には、『お弁当作ってきたから一緒に食べよ』と言う者までいた。
「おいおい、俺を差し置いてみんな何をゆうてんねん」
部長がここぞとばかりに権力を振りかざそうとするも、皆引き下がる様子はない。そこへ───
「高木さん、約束してた蕎麦の店いこう」
スゥーっと横から割り込んで、サッと肩を抱き、スマートに群衆からアタシを連れ出してくれた。
「……海原さん」
何故か、涙があふれそうになった。




