美人は三文の得!? ─3─
髭面のもっさいおっさんが、身体をくねらせモジモジモジモジ。モジモジモジモジモジモジモ…………
「もお!なんやオトン!」
無視したくてもできないくらいのモジモジ攻撃に、あたしは耐えきれなくなってつい、声をかけてしまった。
「あああああのな、見よう思たんちゃうで? それはホンマ。見たくて見たんちゃうねんけどな、見てしまってん。見てしまったってゆーか……見えてしまったってゆーか……」
「ほんっまに、いい加減そのまどろっこしい言い方やめた方がいいで? 嫌われんで? ってか嫌いや」
毎日毎日モジモジ攻撃を繰り返されては、たまったもんじゃない。この人にはハッキリ言わないと伝わらないんだ。そう思いキッパリと言い切った。すると、
「…………」
黙り込んで下を向くオトン。それはそれで、アタシも少し気になってしまう。
「……何やの? 何を見たん?」
口調を和らげ、声のトーンを抑えて聞くと、
「……でも嫌いなんやろ……?」
「ん?」
「今、嫌いってゆうたやん。オトンの事、もう……嫌いなんやろ……?」
アタシは後悔した。確かにモジモジ攻撃はウザイ。そんなオトンは嫌いだけど…… 別にオトンを全否定したい訳でもない。だけどこの状態。
『私の事……もう嫌いなの?』と瞳をウルウルさせて彼氏に詰め寄る乙女状態と化したオトンを見て、とてつもなく面倒臭い状況を作り上げてしまったと。
「嫌いじゃない。嫌いになんかなるわけない。だから教えて」
「……ホンマに?」
上目遣いで聞くオトンに虫唾が走ったが、ここは我慢だ。
「ホンマやで。何があったんか、ゆうて?」
優しく優しーく。面倒は早く片付けないと。
「ほんなら…… あのな、麗美が風呂に入ってる間にな、携帯鳴ってん。LINEやったけど風呂場までもって行ったほうがいいんかなーなんて思っちゃってたらな、『海原 雅人』って名前表示されててな……」
「見たん!?」
「いや、見てない。見てないけど、麗美の携帯、最初の何文字かだけ開かんでも表示されるやろ? ほんなら、『麗美ちゃんの事好きになっ……』までで切れててんけど……見えて……しまっ……て」
話の途中からみるみる顔色が変わるアタシを見て、オトンの口調もみるみる尻すぼみになっていった。
「オトン」
「ん?なんや?」
「もうLINEがこようと電話がこようと、アタシの携帯は勝手に触らんといて。見んのもやめて。次したら本気で嫌いになるからな」
過保護過ぎるオトンと、携帯を見られた事。しかも海原からのメッセージを少しでも読まれたとあって、恥ずかしさも加わりアタシは怒った。




