美人は三文の得!? ─1─
不貞腐れた奈々の横顔をチラリと一瞥し、アタシは黙ってホームで電車を待つ。
「なぁなぁ、一人? 一緒に飲みに行けへん?」
「すみません、よかったらお茶でも……」
「あのー、私、芸能事務所の者なんですが───」
ありとあらゆる声がかかり、その度に奈々が距離を開けていく。
「……なんでそんな離れるん?」
「麗美ちゃんと一緒におったら惨めになるから嫌」
あーその気持ちわかるー。
だけど、それを素直に口に出来る奈々は、潔く思えた。
ようやく到着した電車は、朝のラッシュ程ではないにせよ、座れるだけの余裕はなかった。
二人で出入口付近の手すりに掴まっていると──
「ここっ、どうぞ座って下さい!」
すぐ斜め下から、若い男性の声が聞こえた。そちらに顔を巡らせると、子犬のように瞳をキラキラさせた高校生。男性というよりも、まだ男の子と言ったほうがしっくりくるくらいに幼さを残している。
「……ん? アタシに……言った?」
声を掛けると、見る間に耳まで真っ赤に染まっていく。
「は、はい! あの……僕もうすぐ降りるんで、ここっ、どうぞ!」
緊張のあまりか、かなりの大きな声で高校生が言うせいで、周りの視線を一身に受けていた。
「麗美ちゃん、座らんねんやったら私が座るで」
返事も待たずに奈々が足を踏み出すと、
「いやっ、こっこちらのっ、この方にっ」
頑なにアタシに座らせようとする彼を、これ以上無視出来なかった。
「じゃあ……ありがとう」
礼を言って座ったはいいものの……
まさか妊婦に間違えられた!? それともよっぽど疲れて見えたのか。どちらにせよ、ショックには違いない。
アタシまだ20歳なのに……と落ち込んでいると、席を譲ってくれた高校生の連れと思しき男の子達が口々に、
「ずりぃー! 何抜けがけしてんねん!」
「お前、間接ケツやんけ!」
「いや、俺がじゃねーから」
と若さ全開でじゃれあって、周りの乗客から白い目で見られていた。
「……若さってウザイ」
奈々はそう言っていたけど、アタシはこそばゆくも嬉しく感じていた。




