ライバル出現!? ─8─
料理は素晴らしかった。箸休めに出てきた搾菜を始めとし、北京ダックにフカヒレのスープ。小籠包に四川風麻婆豆腐。その他諸々。ま、麻婆豆腐はママが作った方が美味しいけどね。
だがアタシは、大いに不満を抱いた表情を隠しきれずにいた。
するとテーブルの脇からツンツンとカットソーが引っ張られ、そちらに目をやると、四ノ宮が顔を少し近づけ言った。
「そんな顔しとったら美人が台無しやで」
「だって……」
何が不満だったかと言うと────
「海原さん、それ辛いですか?」
麻婆豆腐を口に入れた海原に、甘えた声で海原に聞いている奈々。
んなもん、食べたらわかるやないかい! と、心の中でキレるアタシ。
「辛いけど、激辛ではないで」
素直に答える海原。
この、アタシの心の声を含めた三人のやり取りは、まさしく三角形で繰り広げられていた。
店に入るなり席に通され、真っ先に座ったのは四ノ宮だった。自然とその後ろを歩いていた海原が隣に座り、アタシは海原のもう一つの隣をゲット! しようとしたら奈々に押し退けられ、チャッカリ隣に鎮座。
せめてもの抵抗として、奈々の隣だけは避け…… 結果、アタシは四ノ宮とジミーに挟まれていた。不機嫌になるのも当然だろう。
不穏な空気を察知したのか素なのかは分からないが、四ノ宮がジミーに話しかけ始めた。
「月島くんさぁ、彼女おるん?」
いや…… いやいやいやいや…… おるわけないやーん。
「いえ、いません」
そらそうやろ。
「えー! めっちゃ社内で人気あんのに!? それほんまやったら、ムーン•アイランドで流血騒動起きるかもな」
楽しい玩具を見つけた子供のように瞳をキラキラ輝かせ、同意を求めるようにアタシに向き直す。
「月島くんと高木さんやったら、逆に嫌味なぐらい美男美女のカップルになんのにな!」
アタシは飲んでいた烏龍茶を吹き出しそうになった。
アタシとジミーって…… 想像しただけで最悪な絵面じゃないか。いや、でも、この世界では美男美女って事になるのか。うーん、複雑。
「海原くん、そう思えへん?」
と、海原に想いを寄せるアタシの気持ちを知っている四ノ宮がそう聞いたのは、何か思惑があっての事なのだろうか。
「ん…… それは僕が困るなぁ」
おどけたように。だけど、含みを持たせた海原の物言いに、一気に頬が赤く染まるのが自分でも分かった。




