ライバル出現!? ─5─
ロッカールームへ入って行くと、一足遅かったせいか、様々な香水が混ざりあって何とも不快な匂いが立ち込める。
呼吸すらまともに出来ない状態で、アタシは鼻の穴を手の甲で押さえながら、ロッカールームの奥へと急いだ。
同じ室内には変わりないものの、奥に置いてある木製のベンチの周囲にはロッカーはなく、すぐ真横の壁上部に換気扇がある。
少しでも空気の良さそうな場所を求めるのは、香水などに興味がない女の習性ではなかろうか?
なぁ~んて分析はどうでもいい。とりあえず一刻も早く酸素を体内に送り込まなくては、死んでしまいそうなくらいにアタシは限界だった。
「……っ……はぁぁぁ~」
ベンチに手をつき、ようやく吸い込んだ酸素に心から感謝する。
「酸素さん、ありがとう」
「……誰? 誰にお礼ゆうてるん?」
ギョッとして振り向くと───
怪訝な表情でアタシを見つめる、四ノ宮の顔があった。
「あぁ……確かに私も、あんまりキツイ匂いの香水は苦手やわ」
苦笑いを浮かべて、四ノ宮が言う。
「まぁ、酸素に感謝するぐらい謙虚な気持ちにはなられへんけどな」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべて、アタシを見た。
「そ、それは言わないで下さい」
かなり恥ずかしい。なんでアタシはいつも、思った事をすぐ口に出してしまうんだろう。でも四ノ宮は、
「ええやんか。高木さんのそうゆうとこ、好きやで?」
……そうゆうとこ? って…どうゆうとこ?
と思ったが、今の今、反省した所だったので、口には出さずにおいた。それより、相談したい事があったんだ。
「あのぉ~、最近、ブツンデレって流行ってるんですかね?」
「…………は?」
人が減っていくと、強烈な匂いも幾分かは和らいだような気がする。
それでもアタシと四ノ宮は、換気扇の下から動こうとはしなかった。
「伊藤奈々かぁ~……そういえば……」
そう言ってロッカールームを見渡す四ノ宮。
うんうん、と一人頷くと、アタシの両肩をガシッと掴み、今にもキスするんじゃないかという程に顔を近付けてきた。
「あの子な、侮ってたらアカンで。ブスはブスでも、かなりのやり手やで」
四ノ宮の言葉に、アタシは首を傾ける。
「やり手……って何ですか?」
「上手く男に取り入るって事。──前から海原くんの事、狙ってたし」
それを聞いたアタシは、心底驚いて四ノ宮に噛み付くように言った。
「そんなん、おかしくないですか? 奈々は………可愛くないじゃないですか。そんな子が海原さん………」
海原さんみたいな男前を狙うなんて身の程知らずもいいとこだ、と言いかけて、口篭る。海原は、こっちでは男前ではないから。それでも……
アタシが一緒に食事に行くのに、引き立て役になるだけやのに、なんで奈々は一緒に来ようと思ったんだろう?
二人っきりじゃない事は大いに問題だったが、それ以前に何故、海原が奈々を誘ったのか。そして何故、奈々は誘いに乗ったのだろうか…………




