ライバル出現!? ─2─
奈々は俯き、蚊の鳴くような声で、「……すみません」と囁く。
決して辛気臭くなんかなく、アタシからすれば相変わらず人形のように愛らしい顔をしているのだけど。部長の手前、何も言えずにいると、
「部長、女性はみんな美しいですよ? ───おはよう!」
最後は奈々に向かって、海原は微笑んだ。
「なんやなんや? 海原くんは全ての女性の味方ですってか? かなんなぁ性格の男前な奴は。そんな台詞吐いたら勘違いしてまいよるで?」
チラリと奈々を見て、部長は痛烈な言葉を浴びせかける。
嫌味なやっちゃな。さすがに気の毒に思い奈々を盗み見ると。
俯いてはいるものの、赤らめた頬はハッキリと見てとれた。その表情は、羞恥心や屈辱ではなく、明らかに恋心を抱く者のそれだった。
まさか……奈々?
上がって行くエレベーターとは反対に、アタシの気持ちは下がって行く。今までに味わった事のないようなどす黒い感情が、身体の中を支配していくのが自分でも分かった。
────奈々のくせに。
ブサイクのくせに、海原さんに想いを寄せるなんて。
開いた扉からさっさと部長が降りて行くのを確認すると、ススッと海原に近付き、
「食事、今日じゃダメですか?」
耳元で、でも確実に奈々にも聞こえるように囁いた。
「ああ、いいけど……」
チラリと奈々を横目で見た後、海原は頷く。
立ち止まって話す私達の横を、俯いたままの奈々がすり抜けた。
最初にキチンと芽を摘んでおかないと。ブサイクに恋愛は御法度だと言う事を、身をもって知っておいたほうがいい。
心の中でアタシは、勝ち誇った笑みを浮かべる。すると────
「良かったら伊藤さんも、どう?」
「……え? どうして……私……?」
実際に声に出したのは奈々だとしても、アタシも全く同じ気持ちだった。
なんで? どうして海原さんは奈々なんか……
呆気にとられるアタシの前で、更に海原はこう言った。
「いつも昼休みに皆のお茶入れてくれてるお礼に、さ」
一体どんなサービス? と目を疑いたくなる程の眩しいスマイル。これじゃあ部長が言っていたように、本当に奈々が勘違いしてしまう。
アタシの視線は、海原と奈々を行ったり来たりしていた。
「あの、でも……お邪魔なんじゃ……」
ええ、邪魔ですよ。当たり前の事聞かんといて。
「そんな事ないよ」
いやいや、そんな事あるでしょ?
「じゃあ……行きます」
うそん。何その思考? アタシがブサイクだった頃には考えられない。じゃあ……って何!? ジャー? 炊飯器?
口をポッカリ開けて一人ツッコミをしていると────
「良かった。いいやんな高木さん?」
顔を覗き込まれたアタシは、慌てふためいて、「はい、喜んで!」 と返事をしたものの、実際は、かなり複雑な心中だった。




