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美意識過剰  作者: 桜木 葉
27/67

初恋の君 ─7─

 


「じゃあそろそろ帰ろっか」


 このままでは生きて帰れないと本気で思ったアタシは、彼の言葉に素直に頷く。


「夜のライトアップも綺麗やねんけど、まぁ……な?」


 含みを持たせた峰岸の物言いに、「うん…」と同じ様に曖昧に応じる。


 人々の流れに逆らいながら出口へと向かうアタシの右手は、再びゴツゴツとした大きな手によって塞がれていた。








 地元に帰る電車の中。空いている車内で、峰岸はアタシにもたれかかって眠っていた。アタシは、と言うと……


 繋がれた手に神経が集中して、早起きで眠いはずなのにまんじりともしなかった。


 友達同士でも手は繋ぐものなのかな? そんな事をふと考える。が、恋愛や男女の関係に疎いアタシが出せる答えでは到底なく。


 気を逸らせる為に、すっかり暗くなった景色を見つめる事に集中した。


 だんだんと見慣れた景色に変わっていく様子が、アタシは好きだ。自分のいるべき場所に帰ってきたんだな、とホッとする。


 地元の大きなスーパーの看板が見え始めた頃。そろそろ起きた方がいいだろうと峰岸を見る。気持ちよさそうに眠っている寝顔は、唯一アタシが知っている異性の寝顔とは全く違って、胸を締め付けた。



「ふふっ……」


 思い出し笑いをしたアタシの肩が揺れたせいか、峰岸が目を開けた。アタシよりも長い睫毛をパシパシと瞬かせ、外の景色を見て声をあげる。


「もう着くやん! ごめん、おもっきし寝てた」


 両手の平を合わせて拝むように謝る峰岸。


「いいよ、疲れたんやろ? ほら、着いたで」



 唯一知っている異性……オトンの寝顔を思い出したとは勿論言わず、アタシはサッと立ち上がった。






「麗美ちゃんお腹空いたんちゃうん? なんか食べに行こか」


 改札を出てすぐの所で、彼はまたアタシの顔を覗き込んで言った。



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