初恋の君 ─7─
「じゃあそろそろ帰ろっか」
このままでは生きて帰れないと本気で思ったアタシは、彼の言葉に素直に頷く。
「夜のライトアップも綺麗やねんけど、まぁ……な?」
含みを持たせた峰岸の物言いに、「うん…」と同じ様に曖昧に応じる。
人々の流れに逆らいながら出口へと向かうアタシの右手は、再びゴツゴツとした大きな手によって塞がれていた。
地元に帰る電車の中。空いている車内で、峰岸はアタシにもたれかかって眠っていた。アタシは、と言うと……
繋がれた手に神経が集中して、早起きで眠いはずなのにまんじりともしなかった。
友達同士でも手は繋ぐものなのかな? そんな事をふと考える。が、恋愛や男女の関係に疎いアタシが出せる答えでは到底なく。
気を逸らせる為に、すっかり暗くなった景色を見つめる事に集中した。
だんだんと見慣れた景色に変わっていく様子が、アタシは好きだ。自分のいるべき場所に帰ってきたんだな、とホッとする。
地元の大きなスーパーの看板が見え始めた頃。そろそろ起きた方がいいだろうと峰岸を見る。気持ちよさそうに眠っている寝顔は、唯一アタシが知っている異性の寝顔とは全く違って、胸を締め付けた。
「ふふっ……」
思い出し笑いをしたアタシの肩が揺れたせいか、峰岸が目を開けた。アタシよりも長い睫毛をパシパシと瞬かせ、外の景色を見て声をあげる。
「もう着くやん! ごめん、おもっきし寝てた」
両手の平を合わせて拝むように謝る峰岸。
「いいよ、疲れたんやろ? ほら、着いたで」
唯一知っている異性……オトンの寝顔を思い出したとは勿論言わず、アタシはサッと立ち上がった。
「麗美ちゃんお腹空いたんちゃうん? なんか食べに行こか」
改札を出てすぐの所で、彼はまたアタシの顔を覗き込んで言った。




