初恋の君 ─6─
アタシ達が並んで歩くと、すれ違う男はアタシを必ずと言っていいほど見る。カップルの男性でさえ、振り返ってまでアタシを二度見するせいで、彼女に叩かれたり怒られたり。
───アタシ、綺麗なんやな。
彼女さんには申し訳ないが、沈みがちだった気分がまた浮ついてくるのがわかる。美人って気持ちいい!
そっと峰岸の横顔を盗み見ると、アタシより10cm近くは上にある小さな顔。横から見るとなおよくわかる筋の通った鼻に、少したれ下がった黒目がちの瞳。薄い唇は口角が微妙に上がっていて、魅力を存分に押し出している。
それでも彼は、ブサイク。アタシはやっぱり複雑な気分で、それを受け入れられないでいた。
いつまでも横顔を眺めていたら、ゆっくりとその顔がこっちに向かい、
「ん?」
と優しい笑顔を惜しみなくぶつけてくる。
……アカン、反則や。
吸い込まれてしまいそうな瞳から、慌てて目をそらすと、右手にゴツゴツとした感触が……
「はぐれたらアカンから」
そう言って彼は、ギュッとアタシの手を握った。しかも普通に握るのではなく、指と指を絡ませる恋人繋ぎ。
まるで酸欠状態の鯉のように口をパクパクするアタシ。でも彼は全く動じず、
「今日の麗美ちゃんは俺だけのもん♪」
平然と殺し文句を言ってのける。
───こんなん……勘違いしてまうやん……
そう思ったのは、端から見るとアタシ達は恋人にしか見えないんじゃないかという事と、彼が自分に恋心を寄せているんじゃないかって事。それから……
今まで生きてきた記憶の中で最高の心拍数を記録するであろうアタシの心臓。これが異性との接触のせいなのか、峰岸に対する恋愛感情なのか。経験のないアタシには、全くわからないでいた。
「あ〜、めっちゃおもろかったな〜! 麗美ちゃん」
ボーっとしていたアタシの目の前に、峰岸の顔がドアップで迫ってくる。
「う……わぁぁぁ!」
思わず避けるように後ろに仰け反ったのはいいけれど……
「おっと」
繋いでいない方の腕を腰に回し、グイッと引き寄せたものだから、更に密着度が増すという逆効果。
「何やってるん、危ないで?」
顔も身体も密着させたままニッコリと余裕で微笑む峰岸。アタシはもう、息をする事さえ忘れていた。
どのアトラクションも長蛇の列だった為、また一人で並ぶのか……との心配は無用だった。
「ラッキー♪ 長い間手ぇ繋いどける」
と、先程とは全く違った反応を見せた峰岸。おかげでアタシの右手はずっと塞がったままだった。
緊張のしっぱなしだった心臓は休む間もなく、そのせいでボーっとしていたアタシに彼がとった行動。もう、生きて帰れないんじゃないかと危惧する程に、どんどん心拍数は上がっていた。
「なんでもない! ちょっと疲れただけ」
腕から逃れ言い訳したアタシの顔は、薄暗くなってきた空の下でも、きっとわかるくらいに赤くなっていたに違いない。




