初恋の君 ─4─
「何か落ちたよ」
峰岸の後ろ姿に声をかけつつ、落とした小さな物を拾い上げると。さっき男の子がくれた飴だった。
待ち構える峰岸に追いつき、「はい」と手のひらを差し出す。
「……何?」
「落としたで」
「んなもん拾わんでええわ、気持ち悪い」
顔をしかめて言う峰岸に、アタシは少し怯んだ。
「だ……大丈夫、食べれるって! 包み紙は破れてないし……三秒以内に拾ったし!」
小学生の頃に流行った三秒ルール。食べ物を落としても、三秒以内に拾えば汚くない、食べれるというもの。
もちろん何の根拠もないのだけれど、子供時代に流行るものなんてそんなもんだろう。
「そうゆう意味じゃなくて。なんか汚らしいやん、クソガキがポケットに入れてた飴なんか」
そんな……あの子は自分の飴が無くなるのも構わずにアタシ達にくれたのに。
「それより早よ行こ! もうすぐ昼やから食べるとこ混むで」
手を取り、峰岸に引っ張られるようにしてアタシ達は歩き出す。もう片方の手の中にある飴は、ほんのりあったかくなっていた。
それがのポケットの中で温められたものなのか、アタシの手の温度で温められたものなのかはわからない。でも、その温もりを逃したくないと思った。
混む前に食事を済ませてしまおう、と考えるのはアタシ達だけではなく。
「なんやあれ。めっちゃ並んでるやん」
峰岸が溜め息混じりにそう呟くのも納得の長蛇の列に、さほど並ぶのは苦にならないアタシでさえもウンザリした表情を隠しきれない。
それでもせっかく来たのだから、ブルーな気分でいるのは損だと思考を切り替える。
「アタシ並んどくから峰岸くんどっか座っとっていいよ」
レストランではなく、野外の出店風のテントからは、チキンの焼けたような香ばしい香りが漂ってきて嫌でも胃袋を刺激する。
長蛇の列も、誰かと話しながらだったらすぐだ。でも一応、ウンザリした表情を崩さない峰岸に気遣って言ってみると。
「ああ……ほんなら頼むわ。これで適当に買っといて。俺コーラで」
あっさりそう言われ、五千円札を握らされる。腑に落ちないまま頷き、アタシは列の最後尾についた。




