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美意識過剰  作者: 桜木 葉
14/67

ブサイク=美人 男前=ブサイク!? ─3─

 




「あれ? 何か頼んだん?」


 いつの間にか戻ってきていた海原が、アタシの前に置かれている小さな空の器を見て聞いてきた。


「これは美人さんにだけサービスや。お前にはやらん」


「まぁええわ…… 麗美ちゃん、ほんなら行こか」


「あ、はい」



 半分払うと言うアタシの申し出も、「マサに払わしといたらええねん」と言う店主の言葉に素直に甘える事にした。


「すみません、なんか……ごちそうになっちゃって」


 店を出て開口一番そう言ったアタシに、


「ええって、最初からそのつもりやってんから。それより、また誘ってもいいかな?」


 照れくさそうにそう言う海原の表情で、さっきの店主の言葉は本当なのだと実感させられる。


 もちろんです、と返事をして、ごちそうさまでした、と頭を下げた。


 送っていくという海原の好意を丁寧にお断りし、アタシの気分は高潮したまま、自宅への道のりを急ぐ。


 早く一人になって、今日の出来事を振り返って実感したかった。







「ただいま〜」



 と声をかけるや否や、バタバタと足音が響く。


「おかえり! 大丈夫やったか? 変な男に絡まれたりせぇへんかったか!?」


 デジャヴ……その言葉がピッタリに思えるオトンのセリフに、アタシは苦笑した。



「大丈夫やって。会社の人とご飯食べに行っただけやし」


 仕事が終わってすぐに居酒屋に行ったせいで、まだ21時前。心配するような時間でもないだろう。


「お風呂沸いてる?」


 これも申し合わせたかのように、エプロンで手を拭きつつ出てきたママにアタシは聞いた。


「ええ、さっき。でも父さんが入るって……」


「あ、そうなん? ほんなら部屋に居てるから出たら呼んでや」


 コートを脱ぎ、階段に足をかけ────モジモジと人差し指を摺り合わせ、気持ち悪いポーズをとるオトンを見た。見てしまった。



「……なんなん? トイレ?」


「いや〜……あの〜……」



 アタシが聞いても、モジモジ……

 モジモジモジモジモジモジモジモジモ……


 あ゛ぁぁ気持ち悪い!


「なによ!? 言いたい事あるんやったらハッキリ言いよ!」


 それでもモジモジし続けるオトンに、アタシは愛想を尽かせて階段をのぼり始める。すると、



「……と………て………だ?」


「は!?全然聞こえへん!」


 キレるアタシにオトンは咳払いを一つし、


「誰と……食事行ってきたんかな〜……思て」


 相変わらずモジモジしながらも、今度はハッキリとそう聞こえた。


「会社の人やけど……」


「お、男……か?」


「うん、そうやけど」


 もしかして……


「オトン変な事想像してない?」


「変ってゆうかぁ……」


「海原さんとは今日初めて一緒にご飯行っただけ。喋ったんも初めてやったし、オトンが想像してるような事は全くないから!」


 一気にそう言うと、ハァ〜っと息を吐き出した。



「そうか! 何もないか! ははっ、ほんならオトン風呂入ってくるわ!───あ、大丈夫。ちゃんとお湯汚さんように入るから! ほんなら海原さんにヨロシク!」


 スチャッと右手を挙げ、軽やかなステップを踏みながら浴室に向かうオトン。


「なんや? イカレてんちゃうか」


 首を傾げるアタシを、ママは含み笑いしながら見ていた。






「あー疲れた」


 ベッドに横になると、たちまち疲れが押し寄せてくる。特に何をしたという訳ではないが、いわゆる気疲れと言うやつか。


 男性と二人っきりで食事するなんて初めてだったし、言われ慣れていない言葉も沢山かけられ、まだ頭がついてこない。


 ムクリと起き上がると、小学生の頃から使っている机の前に座り、メモ帳代わりにしている大学ノートを取り出した。






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