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美意識過剰  作者: 桜木 葉
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ブサイク=美人 男前=ブサイク!? ─2─

 


 グラスを両手の平で包むように持ち、その冷えた手を頬にあてる。火照った肌にひんやりとした感触が心地良かった。


 ───コトンッ…と突然目の前に小さな器が置かれ、何事かと顔をあげると、


「梅酒のシャーベット。初めてマサが連れてきた女の子やから、特別サービスや」


 山男のような店主が、ニヤリと笑いながら言った。


「あ、ありがとうございます」


 店に似合わず……と言っては失礼だが、ここでこんな気の利いたデザートがあるなんて驚きだ。


 暖房の効いた店内の熱気で溶けてしまわないよう、早速スプーンですくって口に運ぶ。


「……おいしい!」


 さっぱりとした甘さに梅酒の味がしっかり効いていて、火照った顔を鎮めると同時に、食事の後の口内をサッパリとさせてくれる。あっという間に完食し、店主にお礼を言うと、


「これぐらいどおってこたぁねぇよ。それより───マサとは付き合ってるんか?」


「いっいえ! まさか……そんな」


 せっかくクールダウンした頬が、また赤く染まる。


「ははっ、そうか。まぁ、ああ見えてアイツ、エエ奴なんやで。ここに連れてくるって事は、たぶんアンタに惚れとるんちゃうか」


 続けて店主が言う。


「アイツ、顔はまぁ……アレやけど。マサが今の会社に入社した時からの付き合いやから……もう5年ぐらいになるかな? 初めて女の子連れてきて、ちょっと嬉しかったわ」


 アタシはこの話を聞いて、ロッカールームを出る時に感じたモヤモヤの原因にハッと気がついた。


 アタシが迷い込んだこの世界では、ブサイクは綺麗に見える……と言うか、美意識が元いた世界とは根本的に違うらしい。従って、ブサイクなアタシは美人という事になる。即ち海原は────


 女性のアタシですら太刀打ち出来ない程にキメの細かい肌。涼し気な目元。綺麗に筋の通った高い鼻。形の良い唇。


 完璧なまでの容姿を持っている彼は、この世界では────ブサイクということになるのか……






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