第二話 日常
支度を整え重い足を進め道場の入り口にたどり着いたレントは深いため息をついた。
「はぁ~。なんでわざわざ死に行かなきゃなんだよ。」
そんな愚痴をごぼしながら無駄に存在感のあるドアに手をかける。中に父親がいると思うと手に力が入らない。覚悟を決めノックをして入る。
「失礼します。」
奥には存在感がありすぎる父親があぐらをして座っていた。
「今回はちゃんと来たなレント。一時間遅刻をしているが。」
「すいません。支度に時間がかかってしまいました。」
そんな言い訳を言ってしまった自分が馬鹿らしく思えていた。
「まぁいい。いつでもこい。」
その言葉を聞いた瞬間レントが道場内を駆け巡りはじめた。その速度はどんどん上がっていきボールがバウンドしているかのような速さに到達していた。そんなレントの眼は血のように赤くなっていた。アルフである。アルフとは世界三大瞳力の一つであり赤羽一族が開眼することができる瞳力である。アルフは幻術や魔法術強化、身体能力強化など様々な力がある。アルフには個人差があり人によって得意な瞳力も違う。レントは幻術や魔法術強化などが得意で並みの人間には圧倒的な強さを誇る。
圧倒的な速さで駆けめぐるレントは朔夜の後ろ死角を狙い横に蹴りを入れた。
「さすがに死角からの横ストレートの蹴りだ。いける!!」
その瞬間朔夜の動きがあり得ない速度で動きだした。
人間は自分に危険が生じると時間が遅く感じることがある。まさにそれだ自分は遅くスローな動きをしているのに朔夜の速さはいかれている。
「なまりすぎだ。サボっていたからだ。前の方がまだ速かったぞ。」
突然後ろから声が聞こえてきた。鳥肌そして死を感じた。
「まだいけるだろ。」
その言葉を聞き
レントは独特の型をとりはじめた。
直立姿勢のまま足を少し後ろに下げる。右手を腰にあてゆっくりと動く。
‥一時間後‥
息を切らし汗だくのレントが床に倒れていた。
「少しは勘が戻ってきたな。明日はサボるなよ」
朔夜は静かに道場を去っていった。
「こちとら全力でやってんだぞ。バケモノかよ。」
そんな愚痴をごぼしながらベトベトの体を洗いに風呂場へと向かっていった。