After school of the world
体じゅうに包帯を巻いて私は地下室をでた。腕には冷たく固まったタヌキを抱いていた。雨はやんでいて湿った空気が薄い霧をつくった。時期に朝が訪れる時間だ。私の後からマスターが地下室から出てきた。私たちは肩を寄せ合いながら家まで歩いた。森を抜けると十字架が目に入った。
「あと十日だな」
マスターは十字架をじって見つめていった。
朝のうちに私はタヌキを埋葬した。この子が寂しくないように庭の畑のそばに穴を掘った。タヌキに土をかぶせながら私は複雑な気持ちになった。あと数日したらマスターにも同じことをしなければならない。果たして私に耐えられるのか自信がなかった。
「あまり激しく動いてはダメだよ」
マスターは杖をつきながら庭に出てきた。足取りは重く今にも倒れてしまいそうだった。
私の体は完全に直ったわけではなくあくまで応急処置だった。細かい調整は自分で行わなければならないが自分の体の仕組みはわかっていたしマスターが持っている設計図もあるので特に心配はしていなかった。
「大丈夫です。それより朝食の準備をします」
マスターと二人で食事をすることもできなくなると思うと私は食事どころではなかった。私は一秒でも長くマスターと一緒にいたかった。
朝食をすますとマスターは一階の自分の部屋に戻り数日間の眠りについた。そしてついにベットから起き上がれなくなってしまった。私は食事を作って運んだ。マスターは無理に笑顔つくり私を気遣ったが私はそれが苦しくて切なくてやるせなかった。
マスターがいつも窓辺の椅子に座り外を見ていたのはマスターも私と同じ世界を愛していたのだと思う。きっと死ぬ寸前まで世界を目に焼き付けたかったのだ。私は時間を見つけては地下室を訪れた。万全な体でマスターを看取りたかったのだ。私はマスターが好きだった。その一方で身勝手に私を創造したことへの恨みもあった。感謝と恨みを抱いたままマスターのお世話をしていた。しかしマスターの笑顔を見るとそんなことを考えている自分に嫌悪感を覚えそのような素振りは見せることができなかった。私がそんなわだかまりを持っていることなどマスターは知らない。だからせめて感謝の気持ちだけを伝えよう。それがマスターにとってのもっとも心残りのない死に違いない。作業台の上に座り辺りを見回すと机の引き出しが開いていた近寄るとそこには分厚い本があった。マスターが私を作る際に使用した設計図だ。私は本を手に取り開いた。その本は設計図にしてはあまりに簡単すぎた。これは日記だ私はすぐにわかった筆跡が私とそっくりだったからだ。その内容に私は驚いた。ページをめくるたびに涙を拭った。この日記が本当ならもしかしてと心の中で幾度も繰り返した。




