第57話 すみ田の構造
ズッキーナが地面から生やした《盾》を解除した。
すると、その前からは。
多くの《屍》たちの群れがやって来たんだ。
「っずっきぃいいい~~なぁあああ?!」
それにマサルの馬鹿が。
彼を強い口調で呼ぶ。
「のぅ。マサルぅ?」
悠長にもズッキーナが腕を組んで。
マサルに訊いた。今、訊くほどの話しなのかは知らないが。
「あんだよっっ‼ っずっきぃいいなァああ??」
マサルが小さなスミタの背中越しに訊く。
でも、そんな馬鹿を、カエデが引きはがして肩に置いた。
馬鹿も、過保護も大概にしろっての。
「じ、自分は……――拙者のことは、好いてぉ、おるでごじゃるか??」
おい。待て。待て待て待て待て。
待てよ。この野郎。
そんなのは今する話しなんかじゃないよね。
「は?? 何、その質問の意味が分かんねぇんだけど??」
きょとんと言い返すマサルに。
眉をひそめて、ドヤ顔をズッキーナに向けるカエデ。
お前が一番嫌われてるってことの自覚はないのか。お前には。
「そんなのいいから! アイツをどうにかしなさいよ! ズッキーナ‼」
しびれを切らしたジノミリアが。
ズッキーナに屍達を指さした。
「――……カッコいい姿を見れば。好感度も上がるんじゃないの? ね? マサル!」
ウインクをしながらジノミリアが。
悪戯に嗤う。
こいつも大概だ。いや、これは作戦なのか。
調子に乗せて解決される為の。
「? え。あー~~……なのか?」
顔を横にさせて言う様子に。
「良し! では――終わらせるとしょうか!」
喜々として地面をズッキーナが踏みしめた。
すると、
「わ゛! あんた! また、こんな――」
激しい揺れにジノミリアが言うも、
「《土竜! 土竜‼ 喰え‼》」
ズッキーナも息を吐かせずに、魔法陣を発動させた。
ガ!
ガッ‼
ガッッ‼‼
地面の中から勢いよく出たソレは。
屍を咥えると、また、地面の中へと戻っていく。
巨大に超えた動物がわんさかとだ。
「こんなとこだろぅか? のぅ? ジノミリア殿?」
「ま。いいんじゃない? てか。カエデーあんた、いつ役に立つのよ?? マサルーこっちにしておきなよ。きちんと守ってくれるわよ? その木偶の坊なんかよか。よっぽど安心快適よ」
ジノミリアの言葉に。
マサルは自身を肩に乗せるカエデの頭部を見た。
視られていると分かったのか。
カエデも視線を、目をマサルへと向けていた。
「カエデ。お前って加減出来ない方だろ? ひょっとして」
「……自分は広範囲と莫大な領域のみの攻撃手だから。こういった――地下の、狭い場所での戦いには不向きというかなんというか。やったことがないんだよね」
肩をすくめながらマサルに言う。
言われたマサルも、
「だってさ。ジノミリア! やったことがないんじゃしょうがないじゃんか」
ジノミリアに事情を説明した。
「いや。そうじゃなくて――あァ。そうね。はいはい!」
面倒くさくなったのか、ジノミリアも適当に流した。
「しかし。ズッキーナ殿の法力は凄いでござるな! 拙者にも、それが出来ればいいのでござるがな~~」
羨ましそうにスミタがズッキーナを見た。
見られるズッキーナは、
「自分には、もう使えぬでござろうなァ。もう、身体の構造も、何もかもが――以前と違うのだから」
失笑しながらスミタに――真実を漏らしてしまう。
そう。
僕も、そのことに気がついていたんだ。




