第５４話 マサルの能力開花
斬！
斬‼
斬ッッ‼‼
「あのさー～～スミターあんまり前に行くなー」
前で《クロテツ》って剣で《屍》を。
縦に、横に――と斬り捌いて行く。
心強いし、頼りにもなる幼女姿のスミタ。
そのスミタの横を。
同様にでくのぼうだった少女姿のマサル。
「お主こそか弱いのでござるから！ 後ろに居れでござる！」
「っはァああ？！ なにそれ！ なんだよ！ その言い方っっ‼」
「いや。その言い方は正しいよ。ほら、僕の肩に――」
バシ！ とカエデの額にチョップをかました。
そのか弱い攻撃に動じず。
カエデも抱きかかえようとしたが。
ガン！ とカエデの両腕に魔法陣が浮かび上がり。
筋肉の中から突き上がる痛みが起こった。
「‼ ……ズッキーナ！ お宅はッッ‼」
「過保護も大概にするでござるよぉ？ 気色悪ぃ」
「ズッキーナァ～～♪ あっりがとうなぁ～～♪」
「‼」
がし！ とズッキーナの手を取って。
握手を交わす。
そして、マサルの笑顔に。
あの仏頂面のズッキーナの顔が――悦に変わった。
「あ！ あの兄さんに額の眼を斬られたじゃん？ 平気なの？？ 痛くないか？」
心配そうにズッキーナを上目遣いにマサルが視る。
そんなマサルに、
「っす、少しは……まぁ……傷は、拙者には視えぬし」
ズッキーナが、ぼそぼそと言う。
「あ。そいつぁーそっかぁー～～だよなー～～おい。カエデ！」
「……何？」
あまりいい表情を向けないカエデ。
言い方もぶっきらぼうだ。
「抱っこ！」
「うん♥♥♥♥」
「スミタ！ ちょいと待て！ 黙って止まれ‼」
「‼ ……む」
スミタも、マサルの強い口調に。
足を止めた。
「ほい。ズッキーナの額の位置まで持ち上げろ」
「うん♥♥♥♥」
「変なところ触ったら承知しねェからな？！」
「うん♥♥♥♥」
ひょいと、持ち上げれたマサルは。
ズッキーナの額を見た。
僕もチラ見をする。
元々あった切り傷の上から。
シゲリンに負わされた傷があって。
どうにも痛々しい。
「ぅ゛わ゛！ ざっくりっていってんじゃん！ ぃ、ったそぉー～～‼」
「……そんなに。痛くはないで、ごじゃる、が」
「ふぅー～～ん？ じゃあ、とりあえずわっと！」
れろ。
「！？ ひょ‼ むむむ？？」
れろ。
赤い舌が傷口を舐め誉めていた。
冷たくも、軟体動物が這う感覚に。
ズッキーナの身体に鳥肌が立ってしまう。
そして。
その様子を目の当たりにしているカエデは。
顔面蒼白になっている。
「汚いから！ 舐めるなっっ‼」
慌ててズッキーナからマサルを引き離した。
「おい！ 急に何すんのよ？ ほら！ 唾をつけときゃあ治るって言うじゃねぇかよ」
そう吐き捨てるマサルに、
「……国が違えば。そのような伝統はないでござろう」
短く、スミタが言い返した。
「？ そうなの？ そっかぁー俺の国はそんな諺があんのよ。取りあえず舐めとけってな！」
「マサル。見てるこっちが不快になるわ。ばっちぃ」
ジノミリアが汚いものを見るかのように。
マサルに視線を送る。
「俺は汚物かよ！ っち！」
「？ む、むむむ？ む？？？」
「？ どっしたの？ ズッキーナぁー……あ゛？ ぉ、おおお‼」
見る見るとズッキーナの額の傷が。
巻き戻す画像のように。
塞がっていく。
そして。
開くと――赤い眼が瞬きをさせた。
「ほら！ ほら見ろよ！ 取りあえず舐めれば治るんだよ！ ほらなぁー俺の言った通りだったろぉー！」
マサルはにこやかに自身を支え持つカエデを見上げた。
そんなマサルを見下ろすカエデは。
「――医療……《聖女属性》……」
ズッキーナの額を見ていた。
