第53話 理由と花束
「なんたることでござるか! なんたることでござるか!?」
自身の境遇に、何往復とスミタが狼狽えるように。
腕を組んで言っている。
「落ち着けっての。スミター」
長くなった黒髪を手で梳きながら。
マサルが言う。
「《黒アゲハ蝶》ってのが。スミタちゃんが追って、ここまで来た理由なの?」
その言葉にスミタも、
「うむ。うむ、うむ! そうでござるよ!」
大きく頷いて声を荒げた。
「あ、あれは《佃田》統領の湯気しげ洸殿の家宝! それを長兄である重惏殿が奪い逃走し、この《グレース・セメタリー》で絶命のに埋葬されたと訊き、参ったでござるよ!」
来て見れば――《屍》が甦り。
スミタ達を襲ったことを、今、思い出しているね。
「なのに! どうして拙者はこのような童になってしまったんでござるか?! 椿姫になんと言えばいいのでござるか!?」
スミタが言う名前に、
「誰? そのツバキってのはスミタちゃん」
マサルも訊く。
「娘の名前でござるよ! 拙者の!」
「…あ、ぁあー~~そっかぁー……」
ゆっくりとマサルも口を閉じた。
何を考えているのかな。この馬鹿は。
◆
(ま。江戸時代とか、それぐらいにゃあ14歳で成人だもんな……っこ、子供がいても……っふ、普通なんだよな?!)
◆
かなり、どうしてだが動揺している。
よく分かんないな。
「そんなに苛立っても。自分は――その姿から変わる術は無し」
ズッキーナがスミタに言う。
言われたスミタは、
「男子を捨てるために来たわけではござらん!」
そうズッキーナに吐き捨てた。
「あーそれは俺もだなー」
マサルも小さく。
それに頷くのが見えた。
でも、僕にとってお前はどうでもいい。
「あ。でも――この墓場にゃあ、なんかアイテムとかあって治せるんじゃねぇの?? ほら! 俺の《靄》も治せるってうたい文句に来た訳だしよぉ! だろう?? っな?!」
喜々として言うマサルを後ろから伸びる腕があった。
「!?」
「治せなくたっていいよ。お宅は自分の――《嫁》になる運命だったんだよ」
「っざっけんじゃァああねぇよ! 変態っっ‼」
腕で押して離そうとするも。
体格差に、腕力差には適わない。
「っぎゃ! っこ、股間のを押し当てんな‼ っぎゃー~~っっ‼」
「嫌がって居るでござろうォ?」
ズッキーナが彼の前に立ち。
彼を見下ろした。
「拙者の心友を返してもらうでござるよ」
ぱちん! と指を鳴らすと。
マサルの身体が、
「ぅ゛お!?」
ズッキーナの後ろにあった。
「自分。モテないでござろうなぁー重いのだ」
「モテなくたっていいんだよ! マサル……こっちに戻りなよ」
手を伸ばすカエデに、
「や。それはいい! 勘弁してくれ!」
マサルもはっきりと断った。
それにカエデの顔も強張るのが分かる。
「カエデ殿。お主は――何故」
スミタが二人の男の睨み合いを無視して。
カエデに来た理由を訊いた。
「花束を持って居たでござるか?」




