表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/67

第49話 悪魔のように

 スミタの中のメゴは歯を剥き出しにして。

 目の前のシゲリンを見上げていた。


 ぶぶぶ。


 ぶぶぶぶぶぶ‼


 シゲリンの奴は剣から。

 またしても、どこからともなく。

 蜂を呼び寄せて飛ばしている。


『そんな弓など! この私には通用しないっっ‼』


 顔を強張らせるシゲリンからは。

 気色悪いほどに――大量の蛆が噴き出し。

 地面にこぼしていた。


 でも。

 間違いなく。

 この場に居る、誰もが思ったはずだ。

 口にはしないものの。

 口にしてはいけないのだと。


「なぁ。ズッキーナさぁ」

「っつ……なんでござるか?? マサル殿」


「俺も。あーゆーの、使えるようになんねぇかなぁ~~」


 口を突き出しながら言うマサルに。

 カエデが後ろから羽交い締めにした。


「ぅげ! カエデ‼ お前っ、重いんだよ‼ 色々と‼」


 ぎゃーぎゃー、と吠えるマサルに。

 カエデも、

「お宅は。そのままでいいんだって、人間が何より。普通が何よりも……――《理想》だよ」

 声を低くさせて言うんだけど。

 言われた奴が納得するはずもない。

 カエデに声を返さずに、マサルは目の前の。


 最終戦を凝視していた。


 メゴが放った矢は。

 一直線にシゲリンの方向へと奔って行っていた。

 確実に、それには意思があり。

 悪を目がけている。


 矢の風圧なのか。

 それとも。

 浄化的なものなのか。

 僕には分からないんだけど。


 バン!


 ばばばば、バァアアアンンン‼


 蜂達が激しい音を立てて爆発をしていた。

 散っていく蜂の様子に、

『こんなもので! 私が負けたと言うとでもォおお!?』

 シゲリンも嗤った。


 それはまるで――


「あ。これフラグじゃん」


 マサルがほくそくんだ。

 そのフラグの意味は僕には分からない。

 本当にマサルの奴はよく分からないから。

 苦手以上に嫌いなんだ。


「あいつ――……」


 言い返るマサルの口を。

 カエデとズッキーナが手で覆った。


「「言わさない」」


 重なった声に。

 マサルも、その手で叩いた。

 そんな彼を無視して。


 全ての矢が突き刺さったシゲリンを。

 

「これで。仕舞いとはいくまい」

「ええ。でしょう、ね」


 その行方を視ていた。


「あンた。執拗にすみ田を甚振りたいことを知っているぜ? アタシ」


 シゲリンが矢に触れると。

 手が激しく燃え出してしまい。

 痛みのない遺骸のはずなのに、

『っく!』

 少し、痛みのある表情を浮かべた。


「あンたは――羨ましかったからだ‼」


『っち、違う……ぃや。どうだったかな? どうだったかなぁあああッッ‼ そんな昔のことなんか記憶になんかないんだよォおおッッ‼』


「すみ田の記憶の中のあンたは……いつも咳をしていて青白い顔で、何処にも行けずに。室内にしかいられなかったんだから! 居場所が布団のエリアだけだったからだ!」


『ぃ、言うな……それ以上を――ッッ‼』


「弟のしげ洸よりもすみ田を必要としていたのは! あンただッッ‼」


 そう言いながら。

 正面から弦を引いた。


 威力を目の当たりにしていたシゲリンも。


 膝をつき。

 剣を地面へと刺した。


 降伏だった。


 両手を上にさせ、

『最後の太刀は――すみ田君にして頂けないだろうか』

 そうメゴに懇願をした。


「いいよ」


 シュッッ‼


「ぉ、おい! メゴッッ??」


 頷いておきながら。

 メゴはシゲリンの眼に向かい。

 矢を放った。

 シゲリンの左目に貫通せずに残った。


「業と……手を抜いたようだね」

「うむ。反撃の力を削ぐように仕向けたでござるな」


「まさに。完膚無きまでに――叩いたわけね」


 ジノミリアが息を飲んだ。


「なんて――悪魔のような女なの? そんなのとスミタがッッ??」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ