表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/67

第45話 吠える重惏

『さて……貴方は――すみ田君に何かな?』


 強張った声でシゲリンがズッキーナに訊いた。

 動きが止まったことに。

 僕達全員が安堵の息を漏らしたのもつかの間。


「さー~~?? なんでござるかなァ? ま。赤の他人でござるとしか申せず」


『なら。なら手を出すんです? 赤の他人様が』

「それは好きな女子に頼まれたからでござる」

『――すみ田君じゃないのなら! 邪魔をするなぁアアアッッ‼』


 ぼたぼた。


 ボタボタボタ――と大量の蛆が飛び散る。

 はっきりいうなら汚いって表現が一番だと思う。


「ま。確かに」


 にこやかに宙に浮び上がるズッキーナ。

 表情を歪ませてシゲリンが見上げ、

『逃がさないよ』

 浮かび上がった。


「ふむ。いい度胸でござるなァ」


『ご存知でしょうか? 貴方は――《神殺しの一族》を』

「??」

『ああ。どうやら存じて居ない……みたいだッッ‼』


 斬!


「!? っか‼」


 斬ッッ‼


「あ゛、っがァ゛ア゛ア゛ッッ‼」


 シゲリンの剣が真っ黒な煙を纏うと。

 そのままズッキーナに斬りかかった。


 ズッキーナの額の《神の眼》を。


 突然の痛みと、溢れ出る血に彼が呻き。

 顔を手で覆うと落ちて行った。


「っず、ズッキーナァ―~~ッッ‼」


 驚いた表情でマサルがカエデの肩から降りた。

 そして、ズッキーナへと駆け寄った。


「ぉ、おい! おい! おいって‼」


「っだ、大事ない……で……っく!」

「大丈夫じゃねぇ~~じゃねぇかよォおおうぅうぅ‼」

 絶叫するマサルの横にカエデがつくと。

 ズッキーナを持ち上げた。

 事実上のリタイヤだ。


 邪魔者が居なくなったことに。

 シゲリンも鼻を鳴らした。


『っふ。肩慣らしにもならなかった』


「だ」


『? え』


 足元から訊こえる声に。

 シゲリンも視線を落とした。

 顔は獰猛な獣のように、溢れ出る気配は――禍々しくもあった。

 僕も、それに充てられる。他の奴らはどうなんだろうか。


『……すみ田君』


 ボタボタボタ――


 ボタボタボタ――


『貴方……武器は、何処から?』


 腹部にはスミタが持っていた剣が刺さっていて。

 貫通をしていた。

 でも。

 それは致命傷にもならないんだ。

 ジゲリンには。


「ぁえ……ら」


 スミタは地面を小さな足で踏んだ。

 そこには《影》があった。


「っは! っふ、っふっふっふ‼ 影から! 影からですかぁああ‼』


 びちゃびちゃびちゃ!


 真っ黒い血と、蛆が飛ぶ。

 なんとも気持ち悪いとしか言えない。


「か……ぇせ……れ、を……」


『私以上に執念深いのは変わっていませんねぇえ゛え゛♡♡』


 喜々と恍惚と顔を歪ませるシゲリンの表情。

 鳥肌も収まらないって。ヤバい、ヤバい!


「あ゛」


『すみ田くぅんんンんンンんん♡♡♡♡』


 彼らの対立する様に。


「引くわー~~ありゃあ引くわー~~」


 マサルがドン引きで視ていた。

 そんなマサルに、

「……今の自分は、何も出来ない人間の女子おなごでござる。あっさりと死ぬ存在になり下がったでござるよ」

 ズッキーナが、息絶え絶えに言う。

 言われたマサルは、

「‼ だから、なんだって言うんだよ! そうしたのはお前っだろォおおうがァああ‼」

 強い口調と、手で額を叩いた。

 おい。

 そこは傷口だぞ。


「――――~~っつ! づァ゛アアアッッ‼」


「ぁ゛。ワリィ……」

「大丈夫。お宅が心配する必要なんかないよ。だって――マサル君は、自分が守るから」

「っひぃ‼」


 カエデがマサルの肩にキスを散らす。

 その行為に鳥肌を、別の意味で立てる。

 おい。

 状況と、空気を読めよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ