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第4話 悪寒の爆弾

(これは一体、どういうことなんだ?!)


 僕は布の隙間から、その衝撃的な。

 硬い機械の塊と、散乱した墓石を。

 愕然と見ていた。


「これは――何たることでござるか」


「酷い有様ね」

 

 ジノミリアとスミタが辺りを見渡した。

 二人が居る場所は。

 この崩壊、破壊された霊園を一望が出来る場所だ。


 黒く漂う煙が。

 辺りを包み込んでいる。


(焦げ臭い……死体が燃えたのかな?)


「先に進むでござる」

「そうね」


 淡泊に言い。

 二人は下へと降り進んで行く。

 そこは墓石の瓦礫で溢れているのに、二人は真っ直ぐに進んで行く。

 一切の迷いもないままにだ。


「む?」


 何かを踏んだ感触に。

 スミタが足元見ると。


 目を瞑った少女の姿があった。


「‼ ぬ゛ッッ‼」


 澄み通る肌。

 眠っているかのような。

 少女の腕を踏んでしまっていた。


「すすす済まぬ! 大事ないでご――」


 慌てて、足を上げてスミタに。

 ジノミリアが小さく息を吐いた。


「謝んなくたっていいよ。そいつは《ムバベト》だし」


「む? むばべ、と????」


 手を繋いでいたままに。

 顎でしゃくりながらジノミリアが言った。

「死んでるってことよ。ここに埋葬されてるの」

 その言葉に、スミタもジノミリアと少女を。

「この爆撃で出てきちゃったんだわ

 往復しながら見ている。


「っし、死体でござる……か? この少女が」


 再び、その少女を見ると。


「‼ あッッ!」


 肌がしわしわ、と萎れていった。

 急激にさらされた外部の風に当たったことによるものだと思う。

 僕には、よく分からないけど。

「南無三――……」

 スミタが手を合わせて、目を閉じた。

「ほら、あんた行くわよ!」

「うむ」

「いつまでも。こんな場所で止まってなんかいられないんだから!」


「うむ」


 スミタを引っ張るように。

 鼻息荒く突き進んで行く。

 少し、惚けているスミタの視線に。

 僕も視た。


 すると。


 そこには――


(? 液体??)


 ドラム缶。

 中から溢れ出ている液体があった。

 その液体は見る見ると広がり。


 煙も立ち上っているようだった。


(この臭いは、爆発したヤツだけのものじゃない?)


 僕も、知らずに喉を鳴らしてしまう。

 すると。


「お主も、この恐怖を感じるでござるか」


 スミタが小さく。

 呟くように僕に訊いてきた。

 だから、僕も。


「これは前兆だよ。スミタ」


 短く応えた。

 きっと、この状況は。


「良くも悪くも、だよ」


「うむ。拙者もーーお主と同意見でござる」

「何が?! あんたは何をぶっつぶつっと言ってんのよ! 気色悪いわねェ‼」

「む゛? 済まぬ」


「まぁ、いいわ! ちゃっちゃと行きましょう!」


 僕は顔を出してスミタへと見上げた。

 すると、彼も僕の方へ視線を向けていた。


 ただ、無言で見合っていたんだ。


 「あ゛ー~~もう゛ッッ‼」


 ジノミリアは爆撃によって破壊され。

 剥き出しになった石棺と。

 中のムバベトに苛立って。

 大きく口を開いた。


「もう! もう! もう!」


 その屍も、身体が分裂して。

 吹っ飛んでいるのもあって。

 それを薄暗い中ーー薄明りを頼りに。

 足を突き進めて行くことが原因なんだけど。


「ジノミリア殿。そのように苛立っていては、この先はやっていけぬでござるよ」


「! 分かってるわよ!」

「ジノミリア殿。お主は戻ってもいいのでござるぞ?」


「! 分かってるわよ! もう! もう‼」


 スミタが苦笑いしながらジノミリアに言う。


 ーースミタ。君のなんか術式で灯りとかつければいいんじゃないの?

 僕は、直接スミタの頭に声を送った。

 その方が。

 ジノミリアに気づかれることもないと思ったし。

 僕、ジノミリアが苦手なんだもん。


 きゃんきゃんって五月蠅いし。

 メアみたいに回りの状況が視える訳でもないし。


 子供っぽいっていうか?

 話すだけ無駄っていうか?


 うん。

 面倒くさいって、いうか?


「いや。それはちと無理でござるよ」

 スミタが宙を見上げて僕に言う。

 僕も、一緒に宙を見上げた。


 《戦闘地区》から飛来した爆弾によって。

 開いてしまった天井。

 かろうじて、スミタのなんかの術によって塞がれている。


 ん゛?


 ンん゛ッッ!?


 ――何で。天井の穴が修復されているの?


「拙者の集中力は、今、その天井にある」

 スミタは苦笑交じりに、僕の家に触れた。

「故に、今だけは。高度な術式はーー使用不可なのでござるよ」

 苦笑交じりに。

 申し訳なさそうな表情を浮かべて言った。


 脳内の会話の途中で。

 ジノミリアが話しかけ来た。


「スミタ! ねぇ、スミタってば!」

「む! 何でござるか? ジノミリア殿」

「はぁー~~?? 僕の話し訊いてなかったの?! あんたって奴はっっ‼」

 ジノミリアの顔がスミタの顔にくっつくかのように。

 間近にあった。

 僕の顔の前には、ジノミリアの平らな胸がある。


「す、済まぬ。で? 如何したでござる????」


 強張った声でスミタがジノミリアに訊くと。

「ほら! 見てよ!」

 ジノミリアが腕を伸ばして、前を指さした。


「もう、次の霊園エリアがあるわ!」

「ふむ」


 スミタと僕が、ジノミリアが指した先を見た。

 その後、すぐに。

 

 ミシ。


「「???」」


 静かな空間に。

 何かの軋みが全体に轟かせた。


 ミシシッッ‼


 ――スミタ。ここの岩盤は、そんなに弱くはないんだけどさ。


 僕も低い口調で、スミタに言ってしまう。

 言ったどころで。

 彼もどうしょうもないと分かってはいるんだけど。


 だって、彼の集中しているのは天井の穴の修復。

 だから。


 ここの地面の穴を。


「ぎゃ!」


「っつ!」


 瞬時に――修復することは出来ない。


 ――崩落するよ。着地に気をつけてね。


 

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