第39話 まさかの○○でござる! ② 愛が在る場所。
くらくら、するでごじゃる。
なんだってこんなに。
眩暈がするのでござるかな?
――あ。起きたの? 起きたのね??
む。
むむむ?
「だ、誰でごじゃるか?」
どうしてだが。
発した声が拙く、上手く話せない。
一体、何が何やらでごじゃるよ。
――誰とは失礼ね。全く、こんなのとこの先一緒だとか~~
声が若い少女のようでござる。
しかし。
姿が視えぬ。
いや、この空間全体。
拙者の辺りの全てが真っ暗闇でござる。
一筋の光りもない。
この闇に飲まれそうになってしまうでござる。
心も、何もかもが。
《無》に帰せてしまいそうでござるよ。
――あンた。きっと状況が呑み込めていないでしょう? ま。仕方ないって言っちゃえばしょうがないわよね~~
拙者の周りに風が吹く。
どうやら少女が走ったようでござる。
足音もなく。
なんと不気味で、幽霊の如くでござるな。
――あンたは死んだの。分かる? 覚えているでしょう??
「む。むむむ。っそ、それは……うむ」
拙者の鼻先に指先のようなものが触れた。
つんつん、と。
「……では。ここは――《常世》なのでござ――」
――んな訳ないでしょうが! あンたと仲良くンなとこ行かなきゃいかなきゃなんないののよ! ばっかじゃないのッッ?!
少女が拙者を罵る。
罵られる言われはないのでござるが。
「ぉ、お主……拙者はお主に何かしたでござるかなぁ??」
思わず拙者は少女に訊いたでござる。
――アタシたちは……《人体創造》による《半人半神半屍》になった。その上で《人工魂魄》となって繋がってしまったのよ。
淡々と、少女は難しくも。
よく分からない単語を申していく。
ちょっと。何が何やらでござるよ。
「……つまりは。拙者たちは……どゆことでごじゃるかなぁ??」
っち! と舌打ちが聞こえた。
――頭が悪いのねぇ! あンたって男は‼ 弟にそっくりだわ! ムカつくッッ‼
ムカつくとか申されても。
む。
むむむ……。
――アタシたちは一心同体になったのよ!
「……うむ」
あまり納得もし辛い。
想像もつかない状況でごじゃるなぁ。
――……反応。薄いわね~~ったく! いいわ! いいわよ‼
「ぇ、っと……お主は一体、何者でござるか? それすらも拙者は知らんのでござるが」
拙者は少女に訊いた。
まず、そこから知らないと話しもままならぬでござる。
――アタシは《炎鬼》って人種だったわ。だから、アイツに選ばれたのかもね! きっとそうだわ!
「アイツとは一体……何方でござるか??」
拙者の言葉に少女が押し黙ってしまう。
何か、言い辛いようなことでもあるのでござろうか。
――アイツは……それは何れ知ることだわ。だから、今はいいのよ。
「とは言っても。でござるなァ~~」
拙者もやはり納得が出来ぬでござる。
――気にすんな! まぢで弟みたいッッ!
「どんな弟なのでごじゃるかァ??」
少女の気迫に押されてしまう。
それに少女も、
――アタシの半身だった。この身体に転生するかなり大昔の話しよ!
少しため息を吐いた。
「て、転生?? む。むむむ??」
――アタシの名前は……愛って言うの。愛って漢字。分かるでしょ??
弾んだ声に。
拙者も、
「うむ。愛殿」
声に応えた。
――さて。アタシの身体はあンたの所有物で。あンたの身体もアタシの所有物でもある訳よ。てなことで契約をしましょう♪ んふふ~~♪
け、契約とは何たる恐ろしい言葉でござるか。
そんなことを何故しなければならぬのか。
――産まれた以上はアタシだって愉しむわよ♪ 産まれた以上はねぇ♪
喜々とした言葉に。
「もう。訳が分からぬでっごっざー~るぅうう‼」
拙者が叫ぶと。
――あンたの《呪い》は、あのまま引き継いでいるわ。残念ながらね。
真剣な声で愛殿が申した。
その事実に。
とても……残念と思ってしまったでござる。
――あンたは《黒鉄》を《黒天獣銃》にして戦えば。間違いなく死ぬわ。死んでしまうわ。それは言っておくわよ。
思ってしまう拙者は。
やはり。
いや、言うまでもない。
――あンたが死んだら。この身体アタシに頂戴。いいわよね? それまではあンたに従うわ。黙っていてあげる♪ それが契約よ♪
「よかろう。その契約に乗るでござるよ」
拙者の死後の身体など。
愛殿にくれてやるでござる。
好きにするでござる。
だから。
その期間は。
「では。戻るとするでござるよ」
拙者の時間でござる。
――いいわよぉ♪ アタシ、視ているだけは得意なの♪




