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第35話 フランケンシュタインのダミアン

 ガラ。


 ガラガラガラ――……。


 球体の殻の至る箇所が割れていく。

 そこから僕たちも目が離せない。


「すみ田殿もいずれ知るでござろう」


「……教えてあげないなんて。意地悪じゃないの」

「すみ田殿も。教えられるのがいいとは思わぬでござろう」

「そんなのはあんたの勝手じゃないの。スミタは違うかもよ」


 ジノミリアとズッキーナが言い合う。

 言葉のキャッチボールにしては過激で。

 殺意と、悪意による氣が発生していて。

 ここの中を淀ませていくのが分かる。


「……スミタ君の身体も(・)創り替えたの? でも、それにしたって。どこに自分の恋人の黒い靄を使用したって言うの? そこんとこはどうなっているの?」


 マサルを抱きかかえで立ち上がった。

 カエデが頬ずりをしながら訊く。

 少し、いや。

 マサルのすかぽんたん男に同情するとはね。


「全部を全部。《人体創造》をする訳がないでござろう」


 腕を組みながらズッキーナが。

 強くため息を漏らした。

 馬鹿か、とばかりに。


「先ほど申したように。遺骸と黒い靄にて結合させた肉体。つまりは――《半人半神半屍フランケンシュタイン》という複雑なのでござる。しかも初なる試み故。いやはや」


 説明を淡々と言い続けるズッキーナ。

 少し興奮していて、頬も赤いのが分かる。


「どうなるでござろぉなァ!」


「ぅっせー~~なぁ! 御託なんざ訊きたくもねぇんだよ! 俺ァ!」

 紅潮するズッキーナの様子に。

 マサルの奴が言い返した。

「今はんなことよか! スミタの奴がきっちり産まれるかって話しだろぅがよぉ!」

 マサルはカエデの頬を手で押し退けながら。

 地面へと降りたが。

 余りの高いカエデの肩からというのもあって。


 べっしゃ!


「っだ! っだっだっだァ~~‼」


 芝生の上に着地ではなく。

 胴体不時着してしまう。

 それにカエデも、

「勝手に下りといて。何をしてんだか~~マサル君はぁ~~♪」

 ひょいと持ち上げて。

 肩へと乗せた。


「ぃ、いだい゛! むむむ、胸ぇ゛~~‼ 膝ァ゛~~‼」


 痛みに泣き出しているマサルに。

 カエデも笑顔で見ている。

 いや、怪我をどうにかしてやんなよ。


「も゛、もや゛になれりゃあ~~ごんな゛ァ゛~~‼」


 もう勝手にやってろ。

 馬鹿共が。


「あ。産まれたでござるな」


 その声と同時に。

 球体が一気に割れた。

 中からは小さな身体が現れて。

 落ちそうになるのをズッキーナが受け止めた。


 とても小さく赤みを帯びた肉体。

 髪は薄い桃色。

 ジノミリアよりも小さい。

 メアよりも、さらにずっと小さい。 


「ほれ。《人工魂魄ダミアン》の誕生でござるよ」


 ズッキーナはスミタをお姫様抱っこをして。

 僕たちに見せた。


「「「っこ、これは――」」」

 

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