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第14話 いざ! 戦闘開始!

 ここは最古の墓場を――《グレース・セメタリー》と名付けた霊園なる《墓標レヴァ》だ。

 眠る《ムバベト》は埋葬されている、決して――その忌まわしい身体が朽ちることなく、苦痛を味わうように、決して――天国にはいけないとだという《絶望ダーボ》を意味している。


 ◆


「……――スミタ? 何を、考えているのさ?」


 僕は、溜まらずにスミタに訊いた。訊かなきゃ、どう、こうと不安で、心が押しつ潰されてしまいそうだ。だから――この一行の明らかな中心のスミタに訊かなきゃいけないんだ。

 じゃないと、僕達が前に進めないんだ。

「この者達との対峙法でござる」


「んでーなんか見つかったんかよ? スミタちゃん♪」

 マサルがカエデと離れ、スミタの肩に腕を巻きつけ。

 肩の上に豊満な胸を押しつけていた。

「つぅー~~か! ははは! 笑える! こぉー~~んな化け物に、化け物のお前が頭を使うなんざよォ! っは、はははは!」

「……お主は面白がって! よくも分からんことを申すでござるな!」

 苛立ったスミタが、身じろぐことなく、窘めるようにすかぽんたん男に言う。

 表情も、硬いスミタに。僕も彼に同情こそしないけど。

 

 生き延びて欲しい、と心の底から思ったんだ。


「マサル――」


「ぁあ゛?!」

 ぐい――とカエデが鳴れた手つきでマサルのすかぽんたん男をスミタから離すと、自分の胸元に戻して抱き締めた。マサルも、あまりの自然のことに、目を点にさせていた。

「っへ??」


「空気が――変わった」

「ああ! こいつァー! 大っっっっ変♪」


 カエデと、ジノミリアが顔を、表情を変えた。

 口調も様々だったが。言う言葉は――ほぼ、同じで。

 強張っていた。


 制止していた屍達が、一斉に三人を見た。


「「「「‼??」」」」


 髑髏の壁から漏れる照らし出される灯りが、彼らの姿を浮き上がらせる。

 土色の顔や身体に、古い時代の衣服と。

 視点が定まらない目に、口から漏れる液体に――蛆虫。


 ボタボタタ――……。


「こいつァー……俺。ホラーとか、スプラッタ系統は……血の気が――ぅ゛、うう゛う゛」


 マサルがかくん、と腰が抜けかけてしまう。それに、ぎゅ! と力を込めてカエデも喜々として支えた。笑顔はないけどーー口元が微かに震えている。

(よっぽど、嬉しい展開なんだろぉなぁ……)

 僕も、ため息を漏らして、スミタに言う前だった。


「お主ら! 大概にするでござる!」


 激しく激昂するスミタの声が、辺りに響き渡った。

「この者達は!」

 そして、腰に差している剣に手をかけた。


 ああ、スミタ。


「拙者らの! 拙者らを邪魔すんとする者達でござる!」


 僕を守ってね。


『ぅオォ゛オ゛オオ゛ッッ‼』

 

「っで! スミター~~!?」


 ジノミリアがスミタの肩を小突いた。

 どうやら、

「このド真ん中で! どぉ~~やって! 出るって言うのよ?!」

 僕と同じことを考えていたようだ。

 はっきり言うと、同じことを考えてこと自体。


(嫌なんだけど!)


 イラつく僕を他所に、ジノミリアも。

 ゴツゴツ! と肩を小突きながら言う。

 その拳を当てるのはーー《ムバベト》の方な!

 本当に頭が足りないヤツだ!


「あのなんちゃらってヤツでよーこっから出るんじゃねぇの?」


 素っ頓狂にすかぽんたん男が言う。

 だから、それはスミタが無理だって言ってだろうが!

 どいつも、こいつも!


(馬鹿じゃないの?!)


「うむ! それは無理でござる!」


 きっぽり、とスミタがマサルに言いきった。

 その合間にも、屍が襲い掛かって来る。


『ぉ゛オ゛オオオ゛ァアアォ゛アオ゛ワワワ゛ァ゛!』


 斬!


 話しをしながらスミタが首を跳ねた。

 胴体が離れた身体は。

 ゆっくりと、崩れ落ちていく。

 

 びゅ! 剣についた液体をシミタが振り払った。

 

「あの術式をするには、まだゲージも足りぬ!」


 そんなジノミリアへと屍が。

 スミタを覆い抜かして向かって行った。


「む? っと! ジノミリア殿‼」


 斬ッッ‼


 その剣先が、他の屍を切り裂いた。

 スミタが足を滑らせて、地面に転んでしまう。


「っじ、ジノミリア殿‼」


 スミタの視界は屍の足だけになってしまう。

 地面には僕もスミタの身体に挟まれたから。

 痛いってもんじゃない!


「カエデ殿!」


「っはー~~?? 俺はァ??」


 スミタの言葉に返事をしたのは。

 あろうことか、すかぽんたん男だ。


「え」


 ぶわ! とマサルの身体が。

 黒い靄になって全体を包み込んだ。


「おい。マサル……お宅」


 不機嫌な物言いをするカエデを他所に。

 マサルは。


 ジノミリアに掴み、スミタへと腕を伸ばし。

 最後にカエデに触れたかと思えば。


「あばよ! 死骸共‼」


 フォ……――ン!


 ◆


「って!」


 ドタ!


 ドタ‼


「「っだ‼」」


 バッタン‼


「とぅ!」


 っと。


 マサルは慣れた様子で。

 しっかりと地面に足をつけた。

 それに引き換え。

 スミタとジノミリア、それにカエデは。

 尻をついてしまう。


「おいおいー情けねぇ奴らだなァー」


 元の男の姿になったマサルが。

 口元を大きく広げて。

 僕達に微笑んだんだけど。


(っこ、このすかぽんた男ー~~‼)


 僕は怒りしか湧かない。

 頭か噛みつきたいって気分が。

 増していくんだ。

 そんな僕の気分とは別に。

 カエデは起き上がるとマサルの前に立った。

 

「? 何。痛かったか?? しょうがねぇじゃん」


 口を突き出してそう言うマサルに。

 スミタは鼻を擦りながら。

 

「マサル殿。運んでくれたことに感謝するでござる」


 ジノミリアは地面に腰を下ろしたまま。

 マサルを睨みつけ、宙を見上げていた。


「しかし。出来ればもう少し、上手に運んでくれぬでござるか?」


「無理を言うんじゃねぇよー俺だって、初めてやるんだぜ? 上手く出来たことを誉めろよなァ」


 ぺた。


「……何? 胸、触んなよ。カエデぇー~~????」


 ぺたぺた、とカエデがマサルの胸を触っている。

 無言で、揉んでいる。

 目を閉じながら、もみもみと。


「……何? そんなに胸が好きなの? 巨乳派?」


 苦笑交じりにカエデに訊くとだ。

 カエデは。


「それを確かめてる」


 揉むのを止めない彼を、腕で剥がしたマサルは。

 スミタに言うんだ、満面の笑顔で。


「ここさーどの辺りだろうな。分かる? スミタちゃん」




 

 


 

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