表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

番外編・前編 「レイエンてめぇ表出やがれ」

前にちらっと言った番外編です。

最終話その後。

「……ここで、とある方からご祝辞を賜りたいと思います。では、どうぞ!」


司会の男が、繕った明るい声でそう言って、“その男”は壇上に上がった。

その姿に、一部のものたちがざわつく。


新婦もただ驚きに息を呑み、新郎もまた言葉を失った。


「えーご祝辞を述べさせてもらいます、魔族全員が協力したことで一億年に一度の奇跡が起こって、あの世から召喚されました……」


その男とは——


「どうも、花嫁の父です」


変身した俺である。








話はしばらく前に戻る——




「国を挙げての結婚セレモニーだ!?」

「うん」

「お父さんそれ聞いてないぞ!?」

「え、だって言ってないし」


ユリアは何言ってんのとばかりのキョトン顏で俺を見てきた。解せぬ。


しかしこんなに興奮していては話が続けられない。

ひとまず落ち着かないと。

ヒッヒッフー、ヒッヒッフー……よし大丈夫。


「それで、式はいつなんだ」

「明後日」

「明後日!?」


前言撤回。全然大丈夫じゃない。


「なんっ、えっ、明後日!? 急すぎるだろ!」

「いや、でももう招待状も出しちゃったし」

「出しちゃったの!?」


お父さんにいうより先に!?

つまり、俺よりも他人が先に知ってたってことだよなぁ!?


「しかも、招待状って……え? 国を挙げての結婚式が招待制?」

「いやいや、国用のセレモニーはまた別だから。明後日の式は、まず身内で集まって祝ってもらおうってことで」

最大の身内(おれ)を差し置いてるのに!?」

「えー、だってお父さん面倒なんだもん」


グサリ。い……今のはかなり心臓に刺さったぞ……。


ショックのあまり倒れこみそうな俺に、ああ違う違う、とユリアは付け足した。


「お父さんの性格とか存在とかが面倒ってことじゃ……なくはないけど……」


ユリアさん、聞こえてますよ。


「と、ともかく一番に面倒なのは、ほら、お父さんって死んでることになってるから!」

「死ん……ああ、そっか。俺ってユリアに——勇者に倒されたことになってたっけ」

「そうそう、それなのに参加したらほら、騒ぎになるじゃない」

「あー……」


確かにそうだけど。


「そもそも騒ぎになるような奴に出したのかよ?」

「あーうん。ほら一行のみんなには出したからね」

「なるほど。……少し気になってたんだが、あいつらって今どうなってるんだ?」

「……えっと、まぁみんな元気にやってるよ」


その間が凄い気になるんだが。

レイエンも、自分のせいでという引け目があるのか、チラチラと少し聞きたげに視線を向けてきている。


「えっと。まず剣士は覚えてる?」

「ああ」


あの豆腐メンタルな。


「あの人はまぁ、魔王討伐の功績が認められて、さる王国の王女と結婚したよ」

「おお! 大出世じゃないか!」

「うん……でも週に一度くらい泣き言の手紙が来るけどね……奥さん凄い怖くって、しかも逃がしてくれないんだって」

「……」


頑張れ、豆腐。


「じゃあ、あの魔術師は? ……捕まったのか?」

「ああ、あの事件は結局、さらわれた女の子の方も魔術師にベタ惚れでね。結ばれたみたい」

「それはよ……」

「ただ、女の子が大きくなってきちゃって、魔術師の方が冷めて、今は喧嘩が絶えないそうだよ」

「……くないな」


ロリコン! 芯までロリコンかよあの男!

中途半端な誇りしか持ってないくせに!


「あとは、あの僧侶か」

「まぁ、あの人はね……うん、今は良い人だよ。私が本気で教会とあの人たちの心の“お掃除”にかかったからね」


その言い方に不穏なものを感じて、俺はゴクリと唾を飲み込んだ。


「……それってまさか粛清とかそう呼ばれる掃除じゃあないよな?」

「……黙秘権を行使します」

「ああやっぱりそっちなんだ!?」

「黙秘権を行使します」


くっ、セリア……! 俺たちの娘がいつのまにか黒く染まってしまいました……!


「でも、話聞いてる限りそいつら来れなそうじゃないか。なら俺が言っても大丈夫じゃないか?」

「いやいや、村のみんなとかも呼ぶんだよ!? 無理、ゼッタイ無理!」


くそ、ちちが存命の時にはなかった反抗期が、よりにもよって今来るなんて……ん?


「えっ、てことはなに!? お父さんのユリアの結婚式出れないの!? 晴れ姿見れないの!?」

「だから最初からそう言ってるでしょ!」

「マジかよぉっ!?」

「ああもう、お父さんうるさい!」


そりゃうるさくもなる。

だって可愛い娘の晴れ姿、あきらめていたそれが、明後日に実現するというのに!


「見れないだなんて……っ!」

「もー、こうなるから教えなかったのー!」


こうなるからってなんだー!? なんて怒鳴る俺たちに、まぁまぁ、とレイエンが口を挟む。


「まぁまぁ、お二方とも落ち着いて……」

「お前は黙ってろレイエン!」

「は、はい」

「ちょっと、お父さんレイくんに当たるのやめてよ!」


レイくん? ……レイくん!?


「ちょっと待て! いつの間にそんな呼び方する関係になってんだそこ!?」

「呼び方!? もうすぐ結婚するんだし、このくらいの呼び方普通だけど? お父さん考え方古すぎ!」

「ハァア!? そもそも俺、二人にまだ結婚していいとか言ってないし! レイエンからも正式に“僕に娘さんを〜”とか言われてないぞ!?」

「えっ、あ、僕にユリアさんを……」

「「今言うの!?」」

「えっ!?」


二人に口を揃えて言われて、オドオドしだすレイエン。

三本目の腕までワタワタと動いている。


「えっ、でも言わないと……」

「いやもう遅いからな!? 普通前に言うもんだし! これもはや事後報告だし!」

「じゃ、じゃあ、えっと、ユリアさんは僕が貰いました!」

「あ、レイくん!」


過去形……だと……!?

もうユリアは俺のものだ的な?

もらっちゃったぜ的な?

……よし。


「ちょっとレイエンてめぇ表出やがれ」

「えっあれ、ダメでした!?」

「あーもうレイくん天然すぎ……でもそこが好き」

「ユリアそこで惚気ない! そしてレイエン、お前はニヤニヤすんな!」


一層カオスになっていく状況の中、しかしカオスはこれだけじゃすまなかった。


突然家の扉が開いて、声が飛び込んできたのだ。


「陛下!」

「うるさい今取り込み中……え?」


俺のこと、陛下って呼んだってことは……。


警戒するように表情のユリアと驚いたのか間抜け面のレイエンの、その視線の先を追うように振り向く。

そこには、二度と会いたくなかった者たちがいた。


「陛下、お久しぶりっす!」

「再びお会いできるとは……!」

「し、死んじゃったかと思ってました〜っ!」

「……どうも」


それぞれ全然違う反応を返してくる四人。

その特徴的な髪色なんかが、あからさまに彼らが魔族であることを示している。


「ちょ、なんでここにいるんだよ四天王……!」

「四天王?」


ユリアの不可思議そうな声が妙に響いた。

後編に続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ