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一人目 「まずは俺に挨拶に来い!」

そういえば、とふと思った。

結婚すると言っていたが、その相手は一体誰だろうかと。


パッと思いついたのは、パーティの中にいた剣士だ。

イケメンで、炎をまとった剣を使っていた。

なんだかユリアと親しそうだったし、まさかあいつか……!?


気になった俺は、兵士の一人を呼び寄せた。


「何でしょうか魔王陛下」

「お前、ユリア……勇者のパーティにいたあの剣士の男を覚えているか?」

「え? ええ……」

「調べてこい」


は? と兵士は首を傾げた。


「た、例えば何をでしょう?」

「あいつがどんなやつなのかとか、勇者との関係とか勇者との出会いとか、そんなことをだ!」

「は、はい、分かりました」


俺が怒っているのが伝わったのだろう。

兵士は慌てて部屋を出て行った。






さて、その調べに出させた翌日。

またまた勇者一行がやってきた。

もちろんその中には可愛いユリアも、あの剣士の男もいる。


「くくく、勇者よ。懲りずにまた来たのか」


魔王っぽい口調とセリフを意識しながら、ユリアたちに話しかける。


「魔王よ、今日こそは倒す!」


ユリアは強い語調でそんなことを言う。

ああ、いつの間にそんな風に強気で物が言える子になったんだ……昔はむしろ弱気な子だったのに……。


俺が娘の成長に思わずウルリときていると、空気を読まない奴が話しかけてきた。


「早くやろうぜ、魔王?」


……剣士だ。

ちっ、こいつ、何なんだ!

かっこいいと思ってやっているのか知らんが、剣を肩に乗せて腕で挟んでる姿は、たしかにイケメンだがチャラい! ひじょーにチャラい!

そもそも、ユリアに気があるんだというなら、


「まずは俺に挨拶に来い!」

「は?」


剣士は右を向き、左を向き、「え、俺?」とでも言いたげに自分を指差した。


「他に誰がいる!?」

「え……っと、こ、こんにちは?」

「そんな挨拶でいいと思ってるのか!?」


こいつはユリアをナメくさってる!

俺はズビシッと剣士に人差し指を向けた。


「お前だけは許さん!」

「なんで俺ばっか!?」


一行は突然の俺の怒りに戸惑っている様だ。

なんとかして、こいつと一対一に持ち込みたい……そうだ!


「剣士! もしもお前が俺と戦い、この体に一つでも傷を付けられたら、俺は負けを認めてやろう! ただし、戦うのが剣士一人であれば、だ!」

「だからなんで俺!?……ってえ!? 何みんな俺のこと押してんの? え、ちょっとマジで!?」


よしよし、予定通り。

一行は俺の強さを理解している。

剣士はごねているが、倒すよりも傷一つつけるだけでいいなら、そちらの方が楽だし可能性は高いのだから。


「安心しろ、殺しはしない。ただ、まず一つ聞かせろ」

「な、何を?」

「お前——勇者とその、付き合っているのか?」


空気が凍った。


そしてその凍った空気を打ち破るように、調べに行かせていた兵士がバァンと扉を開いた。

ユリアが目を見開く。


「魔王様、ご報告します!

剣士は先日、大衆の前で薔薇の花を持って勇者に告白し、『恥ずかしい、止めて。そしてごめん、生理的に無理』とこっぴどく振られたとのことです!」


兵士の声は勇者一行にもはっきり聞こえる大声だった。

知らなかったのか、何人かが驚いた顔で剣士と勇者との間で視線を行き来させた。

剣士は顔を伏せて拳を握っている。


やばい、これはガチで申し訳ない。


「そ、それは、なんというか……ごめんね?」

「っ、ふぅっ……!」

「ええ、もしかして泣いてる!?」

「な、泣いてねぇよ……っ!」


泣いてるじゃん!


「お、れだってなぁ……! 生理的に無理とか言われてっ、すごい辛かったけど……っ、それでもこの最高のパーティの関係を壊したくないから、我慢して、耐えてたのに……っ!」


もう無理! と言って剣士は、


「うわあぁあああん!」

「お、おい、待て!」


……叫んで魔王城を出て行った。

あちゃあ。


ユリアがキッとこちらを睨んできた。


「くそッ、魔王これが狙いか!」

「え、何の話?」

「とぼけるな! まさか、精神攻撃で来るなど、何て卑怯な!」

「えええ……」


覚えてろよ、と勇者一行は剣士の後を追う。





——本日の勇者たち。

剣士負傷(心)の為、撤退。


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